【ディスクレビュー】エアロスミスのデビューアルバム『野獣生誕』を全曲解説してわかったこと【洋楽名盤解説】

ロックを散々語っておきながら、お前エアロスミスのデビューアルバム『野獣生誕』を聴いてないとかふざけんなと、悪魔の心の声にささやかれ20代後半にして初めてアルバムを聴いてみた。
このディスクレビュー記事は一枚一枚レビューしていくシリーズになっている。サブスク主流の時代にアルバム単位で曲を聴いてほしいという意図も込めてレビューしている。ミュージシャンたちの芸術作品を味わってほしい。

エアロスミスをはじめから聴きたいという人向けの内容となっている。感覚や感性の話ではあるが、これから聴く人へ参考になれば幸いだ。

『野獣生誕』全曲レビュー/おすすめ度(★5段評価)
まずは結論、80年代のエアロスミスから入った身からすると物足りなさがある印象だった。
とくにスティーヴン・タイラー特有のシャウトする声。あれが圧倒的に少ないし弱い。しかし、ある意味まだまだ成長が見える作品であるとも言える。
『野獣生誕』 | 収録曲 | 収録時間 | おすすめ度(5段階) |
1 | Make It | 3:39 | ★★★☆☆ |
2 | Somebody | 3:45 | ★★☆☆☆ |
3 | Dream On | 4:25 | ★★★★★ |
4 | One Way Street | 7:00 | ★★★★☆ |
5 | Mama Kin | 4:25 | ★★★★☆ |
6 | Write Me A Letter | 4:10 | ★☆☆☆☆ |
7 | Movin’ Out | 5:02 | ★★☆☆☆ |
8 | Walkin’ the Dog | 3:11 | ★☆☆☆☆ |
1. Make It
ハードさはあんまりない、ヴォーカルは今のスティーヴン・タイラーとはまた違う甘い雰囲気が漂っている。
イントロのギターはザ・ランナウェイズの “Cherry Bomb”(チェリー・ボム)にも影響を与えたのではないかと思うくらい似ている。
「ダッ、ダダッ、ダッ、ダッ、ダッ、ダダッ、ダーン」と切り込んでいくギターが耳に残る。「こんばんは、俺たちのショーへようこそ」との第一声から始まるこの曲は、まさにエアロスミスというバンドのデビューにふさわしい歌詞だろう。
「Make it」の意味
- 成功する
- 時間に間に合う
スラングでの意味
- (ドラッグで)ハイになる
- 性交する
2. Somebody
「あれっ、さっきと同じ曲じゃね」と耳を疑いたくなるイントロから始まる。
デジャブか?
2:06からのギターソロは単調でシンプルではあるが荒々しさも持っており、スティーヴンがそれに合わせて歌っているのがいい化学反応を起こしてくれる。
ハードロックかと言われるとけっこう微妙、ただロック魂は感じる一曲。
3. Dream On
言わずと知れた名曲。
この曲は以前から知っていたが、アルバムの収録順で聴くのとベストアルバムで聴くのとは印象が変わる。
確かに『野獣生誕』の中では完成度が高いバラード曲だ。
「過去のことは忘れて、希望のある明日へ夢みよう」というメッセージが込められている。
アルバムの中では初のシャウトを聴くことができる。
当時17〜18歳のスティーヴンが、スタインウェイ&サンズ社製のピアノで作曲したのが元になっている。
4. One Way Street
「うわ〜、田舎くせえ〜」とそんなアメリカの田舎の土臭さがぷんぷんした曲。
でもこれがたまらん、まさにブルースってやつよ。
特にハーモニカがこのアメリカンロックの特有の音。
映画『ターミネーター2』に出てくるような夜のバイカーバーとかで流れていそうな雰囲気を漂わせていている一曲だ。5:09からの抜きのギターと手拍子は耳心地がいい。

確かに酒を飲みながら聴くにはいいかもな〜
5. Mama Kin
スキマ感はこの曲にも言える。ギターを始めたばかりの人でも弾ける単調なイントロのギターリフは、最近の曲と比べるとダサい印象だけど嫌いではない。
むしろ個人的には好き。
HIKAKINさんの母親のことをママキンって言うけど、こりゃ違う。
スティーヴンがエアロスミスをやる前からのお気に入りの持ち曲だ。
「ジプシーのように生きるのはイージーじゃねぇ」と歌うスティーヴン。

ジプシーは定住せずに移動をする民族のことらしいよ
ドラッグ漬けになってても、自由奔放に生きていても、ジプシーのように移動しながら生活していても「ママキン」と連絡は取っておけよって歌った曲だそうだ。
ママキンの正確な意味は不明だが、
“Kin”というのは英語で「近親者」という意味だそうだ。
つまり母親っていうことなのか。あくまで推測でしかない。

調べてみたらタイトルは”Mother F○○ker”の隠語で、スティーヴンは左腕に”Mama Kin”のタトゥーを入れてるみたいだ。
参考:レコード・コレクターズ2023年10月号【特集】 エアロスミス VS キッスより
6. Write Me A Letter
王道のロックンロールといった印象があるが、あまりにも普通すぎて頭には残らないちょっと残念な曲。
元の歌詞は”Write Me”ではなく”Bite Me”という歌詞だったそう。
「彼女なしではいられない」
「オレに手紙を書いてくれ」
と連呼しまくっているのが少々しつこい。
7. Movin’ Out
AC/DCばりのこのスキマ感がいい。
カントリー感もあって頭の中に
「カウボーイ、カラカラに乾いた土、ガンガンに照らす太陽、沈みゆく夕日」
そんな情景が浮かんでくる。
2:40からの空間系のエフェクターを使い浮遊感を演出しているのが面白い。
もちろん所々シャウトするのもいい。
また、後のアルバム『ゲット・ア・グリップ』(GET A GRIP) の “Livin’ on the Edge” の原型にもなっているようなギターリフが印象的な曲だ。

20年越しにアイディアを再構築するのは天才的だな。
「Move Out」の意味
- 引っ越す
当時ぼろぼろのステーション・ワゴンでツアーをしていたエアロスミス。
町から町へ転々としていた様子を歌っているのかもしれない。

8. Walkin’ the Dog
曲のはじめはクールダウンしたテンポから、徐々にスティーヴンの遠吠えが聞こえてくる。
やっぱりハードさにかけ飽きも感じてきてしまった。
ちなみに、こちらはカヴァー曲で原曲はルーファス・トーマスの1963年の楽曲だ。
原曲はけっこうクセがあるのでそちらの方が好みかも。

エアロスミスのバージョンは結構アレンジを入れているね

荒々しさが増した雰囲気が出てんな〜
アルバム『野獣生誕』の歴史・解説
エアロスミスのデビューアルバム『野獣生誕』は1973年1月にリリースされた。
また日本での発売は1975年10月で本作は日本でのデビューアルバムとは言われていない。

3rdアルバム『闇夜のヘヴィ・ロック』(Toys in the Attic)のヒットがあってから発売になったみたいだよ
解説
当時は世間からも騒がれなかったし、音楽評論家からはザ・ローリング・ストーンズのパクリだなどと言われ酷評だったそうだ。
CBSが同年にアルバム『アズベリー・パークからの挨拶』でデビューしたばかりのブルース・スプリングスティーンを後押ししていたからとも言われている。
ミュージシャン | アルバム | ヒット曲 |
エアロスミス | 『野獣生誕』 | “Dream On“ |
ブルース・スプリングスティーン | 『アズベリー・パークからの挨拶』 | “Blinded by the Light“ |
マイク・オールドフィールド | 『チューブラー・ベルズ』 | “Tubular Bells“ |
ニューヨーク・ドールズ | 『ニューヨーク・ドールズ』 | “Personality Crisis“ |
クイーン | 『戦慄の王女』 | “Keep Yourself Alive“ |
アバ | 『リング・リング〜木枯しの少女』 | “Ring Ring” |
トム・ウェイツ | 『クロージング・タイム』 | “Ol’ ’55” |
スージー・クアトロ | 『サディスティック・ロックの女王』 | “Can the Can” |
ポインター・シスターズ | 『ポインター・シスターズ』 | “Yes We Can Can” |
【参考:Top 15 Artists Who Released their Debut Recording in 1973】

リンクがある記事では詳しい解説をしてるからチェックしてみてね〜
ボロボロのワゴンでツアーをしていたエアロスミス。
彼らの噂を聞きつけてニューヨークのマックス・カンサス・シティでのライブを観たレコード会社のデヴィッド・クレブスとスティーヴ・レイバーンが公演後に「契約をしたい」との話を持ちかけCBSコロンビアと契約。
ここから夢物語の始まった。
涼しくなってきた秋口、地元ボストンでレコーディングを始める。
その後リリースされるもののニューヨークとボストン以外では売れなかった。
しかし、後に3rdアルバム『闇夜のヘヴィ・ロック』(Toys in the Attic)がヒット。

『野獣生誕』再販するときに “Featuring Dream On” という文言を新たに付け加えて発売にいたったそうだ。

“Dream On”がヒットしたからな〜
まとめ:『野獣生誕』を全曲解説・レビューをしてみて
今回『野獣生誕』を初めて聴いてみて、ここまで色々書いてきたが、けっこう物足りなさがあるアルバムだという感想がほとんどだった。
ミックスのせいだから分からんが、ほとんどの曲が同じように聞こえる。しかし、エアロスミスというアメリカン・ハードロックを代表するモンスターバンドの幕を開けたデビューアルバムと聞くと響きはいい。
さあ、今回のレビューを読んで興味を持ち、これから聴きたいという人、何から聞けばいいのか分からないという人に参考になれば幸いだ。
そして皆さんの感想、思い出をコメントまでロックな殴り書きしてくれ。
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それでは洋楽を楽もう!
See You Next Wednesday


















