【ディスクレビュー】エアロスミスのアルバム『闇夜のヘヴィ・ロック』を聴き全曲解説して分かったこと
エアロスミス第3弾、今回レビューするのはエアロスミス3枚目のアルバム『闇夜のヘヴィ・ロック』(Toys in the Attic)だ。
これから聴きたい人、ベスト盤でしか聴いたことのない人へ役立つ内容となっているので、是非、最後まで読んでくれると心からうれしい。
今回も初見レビューであるため、往年のファンにとっては違うだろと声を張られるかもしれないが、感性、感覚の話になるので、あくまで個人の意見としてとらえていただきたい。
- 初見ならではのレビューと考察
- 全曲解説&おすすめ度(★5段階評価)
- アルバムの歴史
- これからエアロスミスを聴きたい方
- ベスト盤でしか聴いたことのない方
- 洋楽をとことん楽しみたい方
『闇夜のヘヴィ・ロック』全曲レビュー/おすすめ度(★5段評価)
収録曲 | 収録時間 | おすすめ度(★5段階) | |
1 | Toys in the Attic | 3:07 | ★★★★★ |
2 | Uncle Salty | 4:09 | ★★☆☆☆ |
3 | Adam’s Apple | 4:33 | ★★★☆☆ |
4 | Walk This Way | 3:41 | ★★★★★ |
5 | Big Ten Inch Record | 2:16 | ★★★☆☆ |
6 | Sweet Emotion | 4:34 | ★★★★★ |
7 | No More No More | 4:34 | ★★★★☆ |
8 | Round and Round | 5:03 | ★★☆☆☆ |
9 | You See Me Crying | 5:12 | ★★★★★ |
1. Toys in the Attic
直訳は「屋根裏部屋のおもちゃ」、歌の内容もヤバ目な『トイ・ストーリー』と表現しておこうか。
曲は頭からケツまでアクセル全開、スピード感溢れる。
曲の終盤2:26あたりからの狂ったような、スティーヴンの「ウキャキャキャ」とシャウトする声は、シンバルをもった猿のおもちゃ「わんぱくスージー」(Musical Jolly Chimp)をつい想像してしまう。
そして彼のこの声はヘッドホンで聞くとよく分かるのだが、左右交互に聞こえる。
「もうクラクラだぜ」オレもお前もクレイジーな夜を過ごそうぜと語られているような気分になる。
まさに「闇夜のヘヴィ・ロック」素晴らしい夜になりそうだ。
おしゃれなライトと暗がりの中、爆音で聴きたくなるぜぇ〜
ヘッドホンはしておけよ、ちなみにこれは我が愛用品。オーディオ沼に引きずり込んだ万物の宝。
Amazon限定で半額以下のセールになるのでおすすめだよ。
eイヤホンさんでも試聴してみるのもおすすめです。
“Toys in the Attic” とはもしかするとエアロスミスのステージを表しているのではないだろうか?
「うす暗い屋根裏部屋」はステージで、「何も見えず叫び声が聞こえる、現実は夢の中さ」は観客の歓声。
オレらのライブはまさに裏の世界、現実ばなれした夢のような光景が広がっていると歌っているのかもしてない。
1963年の映画『欲望の家』(原題 “Toys in the Attic”)と同名の映画があるがそちらとの関係性は特に感じられない。
2. Uncle Salty
スローなテンポで終始進むが、1:26からスティーヴンがシャウトし、
サビの「窓の外を見ると、いい天気だぜ」と
クロスビー・スティルス&ナッシュ(※)を思い起こすような自然豊かなブルーグラスのハーモニーが我々リスナーの心をうばう。
ちなみに邦題は「ソルティおじさん」
(※)1969年に結成したスーパートリオ。
メンバーが全員有名バンド出身で、後にニール・ヤングが加わり、クロスビー・スティルス、ナッシュ&ヤング(CSN&Y)となる。
3. Adam’s Apple
「アダムのリンゴ」と題したこの曲は、始まりから何か触れてはいけない危険な香りがする。
そしてこの「イヤな予感」はみごとに的中する。
この “Adam’s Apple”を聴いていてなんか似ている曲があるなと、脳内のロックン・ロール・リストを見あさった時、「ピンっ」ときたのが、
ガンズ・アンド・ローゼズの “Bad Obsession”だ。
意味は「悪の執着/悪いこだわり」という意味。彼らはエアロスミスのリンゴをかじってしまったか?
そう、私がいう「イヤな予感」とは、ガンズ・アンド・ローゼスのことだ。
冒頭歌詞の中にはアダムとイヴの子供、カイン(Cain)が登場する。
このカインという人物は弟のアベルを嫉妬から殺害してしまうという人類最初の加害者としても知られており、『旧約聖書』の『創世記』第4章に書かれている。
ちなみにAdam’s Appleは「喉仏」っていう意味もあるぜ
4. Walk This Way
誰もが一度は聴いたことのある超有名曲。ギターリフを聴くだけで、自然と体がロックンロールしてしまう。
ただ歌詞は思春期まっただなかの男子が女子から手ほどきを受けるというけっこう卑猥な内容。
エアロスミスは2013年にシンガポールで行われた「Social Star Awards」のセレモニーに参加。
前日にHIKAKINのYouTubeを見たメンバーは彼を気に入り、ステージに呼んだ。
ライブでこの曲を演奏したというのも有名なエピソードだ。
そして当時日本でリリースされた時の邦題は「お説教」
エアロスミスにお仕置きされたいそこのアナタ!いますぐこれを聴け!
詳しい内容はこの記事で解説してるから読んでみてね〜
5. Big Ten Inch Record
あれっ、いつの間にかジャズに変わったのか?
いやいや、50年代ロックン・ロールの黄金時代にも感じる。
まさに白黒の世界にタイムスリップしたような雰囲気を終始かもし出している一曲だ。
ただ歌詞の内容、「オレのデカイ10インチレコード」からすると「イカした10インチ・レコード」って本当にレコードのことか?と疑問に思ってしまう。
夜ブラックコーヒーを片手に聴きたくなる、そんなナンバーだ。
この曲はサックス奏者、ブル・ムース・ジャクソンのカバーだからジャズとかR&B要素があるのは納得だね。
タイトルの「イカした10インチ・レコード」を深掘りすると。
1インチ=2.54cm つまり
10インチ=25.4cm となる
現在流通しているレコードよりも少し小ぶりなこのサイズは、1960年代までしか生産されていないものだそうだ。
また1940年代〜1950年代には12インチと10インチはちょうど入れ替わり狭間の時代でジャズシーンでも変化があった頃でもある。そして1950年代にロックは誕生する。
つまりこの曲はジャズや初期のロックン・ロールへのオマージュと考えられるのだ。
実際歌詞の中には “Jivin'” というスウィング・ジャズに合わせて踊るという意味の英単語があるのも手がかりである。
6. Sweet Emotion
トム・ハミルトンの奏でる重低音の効いたベースとジョーイ・クレイマーのドラムから曲はスタート。
うっすらと聞こえるジョー・ベリーのトーキング・モジュレーターの後に、クレッシェンドの効いた「スウィ〜〜〜ィイモ〜〜シャ〜〜ン」とスティーヴン・タイラーとジョー・ペリーの美しいハーモニーが続く。
彼らのハーモニーには、ビートルズ顔負けな洗礼されたサウンドがある。
いやいやっ、待て、待て、落ち着け。
この野獣たちはそんなキレイ事は必要ない、邦題の「やりたい気持ち」がまさにそんな事を表している。なんだよ「やりたい気持ち」って。
ヴォーカルのスティーヴンがギターのジョーの当時の妻エリッサに想い歌にした楽曲としても知られている。
シングルバージョンではジョーのトーキング・モジュレーターは削除されている。
ライヴではお決まりのラストソング。
食後の緑茶のような耳に優しいロックナンバーだ。
話は変わるが、この曲が好きな人には観ていただきたい映画がある。
ベン・スティラーとオーウェン・ウィルソンの共演したコメディ映画『スタスキー&ハッチ』(2004年)だ。劇中のとある場面でこの曲が流れる。
1970年代のアメリカ、ベイ・シティを舞台にした刑事もので、照らす日光、美しい港町、海から吹く潮風と「スウィート・エモーション」は完璧にマッチするのだ。
7. No More No More
空耳か知らんがサビの部分が「飲も〜、飲も〜」にしか聞こえなくなってしまった個人的にすごくお気に入りな曲。
イントロのギターは80年代のヘヴィメタルバンドたちがこぞって似たようなサウンドを真似しているが、元ネタはここか?
いや〜、しかしこのツインギターはエアロスミスの野暮ったさを一気に無くすなぁ〜、野獣生誕どころじゃねえぞ。
クシで立髪をきれいに整えたライオンみたいなのを想像してしまうほどワイルドな奴らの美曲。
邦題は「戻れない」
8. Round and Round
まず第一印象は、これレッド・ツェッぺリンじゃね?
“When the Levee Breaks”と”Daze and Confused” を組み合わせたような曲だ。
重みがあるダークなサウンドが前半の7曲とは打って変わる。
3:49から徐々に一音一音、音程が上がっていくのに緊張感がある。
これってパクリ? いえいえ、オマージュですよと反論されそうな気がするナンバーだ。
邦題は「虚空に切り離されて」
家入レオの「Free」って曲すげー似てるけど、ここからインスパイアされたのか?
9. You See Me Crying
待っていましたこれぞロック・バラード。
これよこれよ、ブルースとハードロックの融合は。
美しいピアノから始まるこの曲の歌詞の内容は、見るかぎり失恋ともとらえられるし一期一会、別れの言葉ともとらえられるそんなナンバーだ。
邦題は「僕を泣かさないで」
卒業式とか1日の終わりにオススメしたい
ストリングスが加わって、オーケストラの生演奏のように臨場感が増し、より立体感がでた印象。
しゃがれたスティーヴンの声は真っ暗い雷雲のよう、
雨という名の涙を流す一方で、スキマを縫うように一点の光から、
後光がさすコントラストのある空を想像してしまう。
これか〜噂のジャック・ダグラス・マジックとは
アルバムの最後にこの曲を持ってくるとはさすがだ!
アルバム『闇夜のヘヴィ・ロック』の歴史・解説
解説
1975年にリリースされた『闇夜のヘヴィ・ロック』はエアロスミスの3rdアルバムだ。
前作発売後はイギリスのハード・ロック・バンド、ディープ・パープルやブラック・サバスの前座としてツアーに参加していたエアロスミス御一行。
なんだかんだで前作が69週間連続でチャートに生き残り、地元ではヘッドライナーを務めるなどフツフツと人気を高めていた。
今作の大きな違いはなんと言っても、ジャック・ダグラスという凄腕プロデューサーの参加だろう。ボブ・エズリンの右腕とも言える彼の存在は、エアロスミスという野獣を乗せた船を大航海へと導いたのだ。
1974年の春、4月に今作はリリースされ、髭ズラ野郎のZZ TOPとのツアーから始まり大忙し。”Sweet Emotion” がシングルカットされ、これがヒット、全米36位にまで上り詰めた。
その後アルバムは全米11位まで急上昇し、キャリア初のプラチナ・ディスクを獲得。
1975年8月11日にはゴールドディスクを獲得。
大出世作としてバンドの歴史に刻まれている。
それがこの『闇夜のヘヴィ・ロック』なのだ。
考察
【出典】Aerosmith (@aerosmith) Instagramより
アルバムのジャケットをじっくり見てほしい。
木箱から溢れ出るオモチャたちを。
望遠鏡をのぞく怖いクマ、その後ろには狂気の表情を浮かべた白馬、腰に手をあて杖をつくネコ、フリルのついたカエル、赤ん坊を引っ張り上げているゴブリンとそれを見つめるゾウ。
部屋を抜け出したのか?赤ん坊の左手には2本のカギがある。
そう、まさに我々はこの赤ん坊であり、現実から解放され、闇夜のパーティーへ招待されているのだ。
まとめ:『闇夜のヘヴィ・ロック』を聴いてみて
私の総評としては『闇夜のヘヴィ・ロック』のロックポイントは4.5という評価だ。
過去2作品と比べると圧倒的に「ヘヴィ」で3作品の中では1番いい。
令和に生きる我々にとっても、遜色ないロック・アルバムに仕上がっているという感想だ。
“Walk This Way” なんかはいい例だろう。
そして過去作と聴き比べると1曲1曲のポテンシャルが高いのと、アルバムを1から通して聞くと見える景色が違う。
少しでも気になった方は、この機会に聞いてみてくれ。
1日の5分でも聞いてくれたら幸いだ。
そしてあなたの感想、思い出をコメント欄に書き込んでくれるとうれしい。
このように日々洋楽の魅力を発信しているので、記事を見逃さないようXとInstagramのフォローをしてもらえると最高だ。
それでは洋楽を楽しもう!
SEE YOU NEXT WEDNESDAY!