【ディスクレビュー】エアロスミスの名盤『ロックス』を3ヶ月聴いてわかったこと【全曲解説】

さて今回もやっていくぞ!エアロスミスのアルバムレビュー、第4回はエアロスミスの4thアルバム『ロックス』だ!
名作と言われるアルバムを隅々まで味わったので、是非最後まで読んでくれると幸いだ。

この初見レビューシリーズはベスト盤でしか聞いてこなかった人間が、1枚1枚丁寧にアルバムを聞いていくコーナーとなっている。
感性、感覚の話になるので、あくまで個人の意見として見ていただきたい。
- 初見ならではのレビューと考察
- 全曲解説&おすすめ度(★5段階評価)
- アルバムの歴史
- これからエアロスミスを聴きたい方
- ベスト盤でしか聞いたことのない方
- 洋楽をとことん楽しみたい方

アルバム『ロックス』全曲レビュー/おすすめ度(★5段評価)
収録曲 | 収録時間 | 評価(★5段階) | |
1 | Back in the Saddle | 4:39 | ★★★★★ |
2 | Last Child | 3:25 | ★★★★☆ |
3 | Rats in the Cellar | 4:05 | ★★★★★ |
4 | Combination | 3:38 | ★★★★☆ |
5 | Sick as a Dog | 4:14 | ★★★★★ |
6 | Nobody’s Fault | 4:22 | ★★★★☆ |
7 | Get the Lead Out | 3:41 | ★★☆☆☆ |
8 | Lick and a Promise | 3:04 | ★★★★★ |
9 | Home Tonight | 3:15 | ★★★★★ |
1. Back in the Saddle
怪しいギターリフからの喉がはち切れんばかりの叫び声で “I’m Back” とシャウトするスティーヴン。
よく聞くとバンドの演奏の裏では馬の「パカラッ」「パカラッ」と走る音や鳴き声が聞こえる。
そう、この曲はまさに再び馬乗りとして舞い戻ったカウボーイが主人公であるのだ。
しかし歌詞はあくまで隠語、ウエスタンの表現の中に本来の意味を隠している。
実際のところ男と女がベットの上でイチャついているっていう歌。
お相手は売春婦のスーキー・ジョーンズ、ブーツを脱ぎ捨てオレはピストルに弾を詰め、馬にまたがる。
今夜オレ様は夜の支配者になるというストーリー。
曲に関して4:02あたりからエンディングまで「パカラッ」「パカラッ」と馬の走る音、ムチを打つ音が聞こえ走り去っていくのは曲の始まりとして最高の表現だ。

これも比喩表現かもな!
前述した通りこの歌の主人公はカウボーイだ。
馬の走る音やムチの音が何よりの証明になっている。
注目したいのはタイトルの “Back in the Saddle”。
これは1941年の映画『Back in the Saddle』およびセルフタイトル曲 “Back in the Saddle”に由来するものと考えられる。
主演はアメリカの俳優でカントリー歌手のジーン・オートリー(Gene Autry)が務め、彼は “Back in the Saddle”という歌を演奏している。
2. Last Child
“Back in the Saddle”と雰囲気は変わってファンキーな曲という印象。
スティーヴンの揺れ動く声がなんとも言えない。
本曲はアルバムからのシングル第一弾で、スティーヴン・タイラーとブラッド・ウィットフォードの共作で、ギターソロはブラッドが弾いている。
ライブ映像でも確認ができるので要チェックだ。

この曲のリフやソロをお気に入りに挙げているギターリストも多くいるよ。
Last Child(最後の子供)はスティーヴンの子供時代の話を聴いたブラッドが着想を得てできたそうだ。
「Last Child」はネイティヴ・アメリカンのことを指しているのかもしれない。
歌詞の中にタラハシー(フロリダ州の州都)が出てくる。アパラチー族とスペインからの移住者が住んでいた地で、「古い町」という意味をもつところだ。
またボーカルのスティーヴン本人もチェロキー族の血が流れており、
“Home Sweet Home” と歌うところからも、俺は(先住民の)最後の生き残りと歌っているようにも聞こえる。
しかし “I’m just punk in the street”という歌詞からただの「街のならずもの」というまさにロックスター全開の表現をしているので謎である。
■「Punk」とは不良やチンピラという意味
3. Rats in the Cellar
Last Childの 3:20 からサイレンの音が鳴り響き、そのまま続くのがこの “Rats in the Cellar” だ。
終始スピード感満載のハイテンポロックソング!心臓発作注意!
2:31からは宇宙空間に入ったようなジョーとブラッドのギターソロが入り、曲の間を縫うようにスティーヴンのハーモニカが響かせる。
これぞエアロスミスの奏でる最強サウンドだ!

オレには見える、見えるぞ、未来のアクセル・ローズが!

まぁ、落ち着けよ。
クイーンの “Stone Cold Crazy” に近いスピードメタル感がある楽曲だよね〜
“Rats in the Cellar”(地下室のドブねずみ)と表したこの曲は、ニューヨークのスラム街の人々を表現しているのだろうか。
イーストサイド、ウェストサイドとニューヨークの街を動き回りスラムへたどり着くという歌詞からもそのように考察できる。
1970年代当時のニューヨークでは貧富の差が激しくなり、有色人種の人たちはブロンクス区へ追いやられスラム街が形成されていったという背景があるのも事実だ。
ちなみにスティーヴン・タイラー本人は前作の「Toys in the Attic」へのアンサーソングと述べている。
4. Combination
グランジロックかというくらい重いサウンドをぶちかまして来るロックソング。
しかし1:13からサイレンをイメージした雰囲気をただ寄せるハイトーンのギターチョーキングが10秒、1:48~1:57も同じ技法が使われ、身も心も非常事態を宣言しないとおかしくなりそうになる。
そのためか、サウンドは重いもののジョーイのドラムはヒップホップさがあり程よく中和されている。
ジョー・ペリーいわく、「この曲はヘ◯◯ンとコ◯◯ンと俺についての曲」らしく、バンドの成功から金が手に入るせいで危ないものに手を出したり、高級品を買ったりして有頂天気分になっていたらしい。
実際に歌詞の中には「GUCCI」や「Yves St. Laurent」といったブランドが出てくる。
そして最後には「俺はこんなにやつれている」という歌詞で終わる。
つまり、彼らの崩壊を意味しているのかもしれない。
「Combination」(組み合わせ・結合)は、精神と肉体のことを表しているとも捉えられる。
5. Sick as a Dog
ロック感がありながらアルバム内の他の曲とは違って「プリィ〜〜〜〜ィイズ」(Please)と段々と耳を抜けていくエアロスミスのハーモニーが美しい楽曲。

“Sweet Emotion”が好きな人にオススメしたい!
2:56からは抜け感、スキマ感があり、ちょっとインターミッション(休憩)するが、3:23からは再び疾走感が出てくる!
“Sick as a Dog”(犬のように気分が悪い)という表現も歌詞に出てくるので、英語学習者にとっても面白いだろうし、歌詞も単調なので歌いやすい。
6. Nobody’s Fault
何か幻想的な、浮遊感があるサウンドから始まる。演奏前のオーケストラがチューニングするような音だ。
つい音を大きくして聴きたくなるが、あせるな、すぐに裏切られる。
0:25から音量注意なのだ!
おぉ、急にメタルとグランジを融合したような重いギターサウンドがやってくる。
やってくれるじゃないかこの野獣どもは。油断もスキもありゃしない。
“Nobody’s Fault”(誰のせいでもない)とかいうタイトルで責任を免れようとしているのか?

メタリカのボーカル、ジェイムズ・ヘットフィールドやニルヴァーナのカート・コバーンがお気に入りの一曲としてあげているよ。
7. Get the Lead Out
この曲を聴くと西部劇の世界に迷い込んでしまったかのような気分にさせてくれる。
“Hey good looking”という西部劇でお馴染みのセリフが出てくるところからもカウボーイ臭がただよってくる。
これがアメリカン・ロックの持っているロックンロールってやつよ。
そう、まさにイギリス勢には譲れない部分。
アウトロは余韻を残し流れていくように終わっていき、カウボーイの去っていく姿が頭に浮かぶ。
8. Lick and a Promise
ガンズ・アンド・ローゼスのスラッシュが弾いた曲?ちょっと忘れたけどあれの元ネタかなと思わせるようなギターリフ。なんだったかな〜
そして「ラ〜ラ〜ラ〜ラ〜」と広がりのあるパートが好き。
2:27の部分なんか観客みんなで歌い出して耳心地がいい。
「Lick and a Promise」という表現を聴いたことがなかったので、ネイティブの友人に聞いてみたところ「”half-assing” something」(いい加減な対応をする)という意味らしい。
もう少しきれいに訳せば「適当な口約束」という意味だ。
ダメダメな男女の関係を歌った内容からも、ある意味教訓のような意味合いも持つ一曲とも言える。
ペロペロして約束を交わすっていう訳わからん語源だけど、なんかヤバさを感じる。
9. Home Tonight
学んだなエアロスミスよ。
前作『闇夜のヘヴィ・ロック』のラストナンバー「You See Me Crying」でバラードを持ってきて今回もその作戦だ。
『ロックス』と言いながら最後にバラード。ピアノを弾くのはスティーヴンかな?
甘いものを食べた後に濃いコーヒーを飲みたくなるようなそんなメロウな感じの一曲。
YAVAYだろ。
所々ハードではあるが、心地よいハーモニーが心に染みる。
ジャック・ダグラスによって今回も計算勝ちされてしまった。完敗だ。
ありがとう。そして最高のグッバイソングを、おやすみ。

マジで最高のバラード
アルバム『ロックス』の歴史・解説
1976年5月にリリースされた『ロックス』はエアロスミスの4thアルバムだ。
解説
【出典】Aerosmith (@aerosmith) Instagramより
1970年代のエアロスミスの傑作と言われ、過去3作品とくらべるとロック感、ヘヴィー感がたっぷり詰まった楽曲が多い。
約1ヶ月という制作期間でレコーディングを完了させ、発売から3週間で全米第3位に輝いた。
もちろんプラチナアルバムを獲得している。
以前からライブ感のある音作りにこだわっていたエアロスミス御一行は、今作をマサチューセッツの倉庫で録音したそうだ。
確かに音の厚みがヘッドホンを通して聞くとよりいっそうハッキリと伝わる。

このヘッドホンはレビューの時に使ってるんだけど、音の広がりがあってオススメだよ〜

ミュージシャンへの影響
『ロックス』はエアロスミスのアルバムの中でも、後世のロックミュージシャンたちに影響を与えた大きな力を持つ名盤として評されている。
以下はそのミュージシャンの主なリストだ。
ミュージシャン(バンド名) | |
1 | Kurt Cobain (Nirvana) |
2 | James Hetfield (Metallica) |
3 | Slash (Guns N’ Roses) |
4 | Brian May (Queen) |
5 | Nikki Sixx (Mötley Crüe) |
6 | Tommy Lee (Mötley Crüe) |
7 | Marty Friedman (Megadeath) |
8 | Wolfgang Van Halen (Van Halen) |
9 | Michael Sweet (Stryper/Boston) |
10 | Richard Patrick (Filter) |
11 | Scotti Hill (Skid Row) |
12 | Lzzy Hale (Halestorm) |
13 | Mark Tremonti (Creed/Alter Bridge) |
14 | Satchel (Steel Panther) |
15 | Vinnie Moore (UFO) |
まとめ:ロック色全開!アドレナリンが噴き出るアルバム『ロックス』
【出典】Aerosmith (@aerosmith) Instagramより
1曲目の「Back in the Saddle」の「俺は再び馬に乗る」という出だしから、ラスト9曲目の「Home Tonight」の「今夜俺は家にいるから」まで1人のカウボーイの物語を思い浮かぶことができる。
また『ロックス』はエアロスミスの中でも最も評価される初期の作品としても最高のアルバムで、前作『闇夜のヘヴィ・ロック』からの進化がはっきりとわかるアルバムに仕上がっていた。
ぜひこれから聴くエアロファンには聴いてほしい一枚である。
当ブログではこのように日々洋楽の魅力を発信している。
記事更新を見逃さないためにも、また今後の活動の励みになるので XとInstagramのフォローをしてもらえると幸いだ。
それでは良き洋楽ライフを!
SEE YOU NEXT WEDNESDAY!!





