【ディスクレビュー】オリヴィア・ロドリゴのアルバム『サワー』を聴いてみてわかったこと【全曲解説】
あなたはオリヴィア・ロドリゴをご存知だろうか?
マイリー・サイラスやデミ・ロヴァート、セレーナ・ゴメスなどの有名スターを多く輩出してきたディズニーチャンネルからの新星だ。
今回はそんな今注目の彼女がリリースした、デビュー・アルバム『サワー』をレビューしていく。
このアルバムレビューは感性や感覚の話ではあるが、これから聞きたい人や少しでも気になっている人の参考になれば幸いだ。
- 初見ならではのレビュー
- 全曲解説&考察
- おすすめ度(★5段階評価)
- アルバムの歴史
- これからオリヴィア・ロドリゴを聴きたい人
- 洋楽をとことん楽しみたい方
2ndアルバム『ガッツ』のレビュー【ディスクレビュー】オリヴィア・ロドリゴのアルバム『ガッツ』を聴いてみて分かったこと【全曲解説】
初来日初日のライブレポート【ライブレポート】オリヴィア・ロドリゴ GUTS World Tour Tokyo 初来日歴史的瞬間を目撃、大歓声の有明アリーナに歌姫が降臨した夜も、合わせて読んでいただくと幸いだ。
『サワー』全曲レビュー/おすすめ度(★5段評価)
収録曲 | 収録時間 | おすすめ度(★5段階) | |
1 | brutal | 2:23 | ★★★★★ |
2 | traitor | 3:49 | ★★★★☆ |
3 | drivers license | 4:02 | ★★★★★ |
4 | 1 step forward, 3 steps back | 2:43 | ★★★★☆ |
5 | deja vu | 3:35 | ★★★★☆ |
6 | good 4 u | 2:58 | ★★★★★ |
7 | enough for you | 3:22 | ★★★☆☆ |
8 | happier | 2:55 | ★★★★☆ |
9 | jealousy, jealousy | 2:53 | ★★☆☆☆ |
10 | favorite crime | 2:32 | ★★★☆☆ |
11 | hope ur ok | 3:29 | ★★★★☆ |
1. brutal
ストリングスからのイントロに始まり、明るい曲かと思ったら、いきなり「ダダダダ、ダダダ」とダークなギター・サウンドが鳴り響く。
まるでポスト・パンクと90年代のグランジのような荒々しい曲だ。
コード進行は、エルヴィス・コステロの「Pump It Up」に似ている。
しかもグランジ要素は歌詞にも反映されていて、自己否定や周りからの見られ方、ティーン・エイジャーの黄金時代の葛藤を描いている。
“and I’m so caught up in the news of who likes me & who hates you”
(誰が私のことを好きで、誰があなたのことを嫌いかなんていうニュースを追っかけてた)
という歌詞からもわかるように、情報に溢れるSNSによって可視化されてしまった世界に疲れ切っているという状態を表現している。
Fワードを使うなんて最高にロックやん。
本当にディズニー出身なのか?
brutalの意味
- (形容詞)(行為)残酷な、野蛮な/(人)残忍な
つまり希望を持つことのできないZ世代のことを歌っている曲なのだ。
先程エルヴィス・コステロの曲にリフが似ていると書いたのだが、コステロ本人はオリヴィアを訴えることもクレジットを要求することはなさそうだ。
彼の考えは以下の記事にまとまっているのでチェックしてほしい。
エルヴィス・コステロは、ポップ・スターの楽曲のギターリフが、自身の楽曲と酷似しているという指摘に「法的に訴える必要はない。馬鹿げている。音楽は共有言語なんだ。引用がなければバッハもモーツァルトも存在しない。ソニー・ロリンズも存在しないだろう」と語る https://t.co/hc9TLYHMgs
— amass (@amass_jp) October 29, 2024
【出典】amass (@amass_jp) Xより
Elvis Costello told Vanity Fair he wouldn’t sue or demand credit from Olivia Rodrigo over similarities between her song “Brutal” and his “Pump It Up,” calling it ridiculous.
— Rodrigo Times (@RodrigoTimes) October 30, 2024
— “Now, I did not find any reason to go after them legally for that, because I think it would be… pic.twitter.com/FM1Pc8I30G
【出典】Rodrigo Times (@RodrigoTimes) Xより
2. traitor
雲の間をかけ抜けるような空間を感じるハーモニーから始まる。
ここではヴァースとコーラスが歌われて曲のイメージや全体像をつかませる。
1:26からアコースティック・ギターが加わり柔らかな印象に変化、しかし歌詞は恋人に裏切られ傷ついたティーン・エイジャーのことを歌った内容。
2:39からは”Ah~”とオリヴィアのバックコーラスが響き音に厚みを出している。
ここでは悲しみを表現するために、少し物寂しい声色に変化しているの注目ポイントだ。
traitorの意味
- (名詞)裏切り者、反逆者
ミュージックビデオを観るとピックアップトラックで友人たちと閉館後のプールへ向かうシーンがある。
6名の友人たちは勝手にフェンスを乗り越えて建物内へ侵入するのに対し、オリヴィアだけがこちらをみて歌っている。
これは演出上カメラ目線になるという意味もあるが、「ボーイフレンドへのビデオメッセージ」と「自立」の意味を表している。
プールへ飛び込んだり、朝日が当たるグラウンドを走る姿はまさにその象徴とも言えるシーンだろう。
そして最後のシーンでは扉を開けて向こう側の世界へ行く演出がされている。
これはジム・キャリー主演の映画『トゥルーマン・ショー』(1998年)のオマージュだ。
このような事から、ただの失恋ソングという意味だけでなく、裏のテーマである「自由」や「自立」を意味していると言える。
3. drivers license
車に乗り込みキーをかけるSEが演出され曲が始まる。
面白いのが、車のキーリマインダーの音(キー抜き忘れ警告音)と同じリズムのままピアノに移行するところ。
冒頭からこんなアイディアがあったかと遊び心が満載だ。
ピアノとシンセサイザーがオリヴィアの歌声とうまく調和をとれている美しい曲だ。
急降下したり急上昇するシンセサイザーの音がジェットコースターみたいで面白いな。
2:24のベース音からロックな雰囲気に曲が変化。
この後にも“I still f***ing love you babe” とFワードを含む歌詞が出てくる。
これは強調するために使われる英語なのだが、ここでは悲しみを強調するために歌われている。
3:18からは1段階高いキーで歌い、寂しさや悲しさをより深く表現している。
詳しい解説記事は【第6回】オリヴィア・ロドリゴ「drivers license」を紹介、歌詞から分かる背景を独自考察【洋楽名曲解説】から合わせてチェックしてくれ!
4. 1 step forward, 3 steps back
鳥のさえずりに合わせてワルツ調のピアノの伴奏が続く。
頭の中に思い描くのは「鳥のさえずりが聞こえる中、朝日に照らされ心も体も温かみで満たされる」という光景だ。
他の楽曲とは違いピアノとベースとオルガンで構成されており、柔らかな印象の曲。
ピアノはオリヴィアが演奏しているよ
歌詞は恋人との電話の中で何気ない会話をするところから始まる。
しかし何か気に障ることを言ってしまったのか、すれ違いが起こり「私は愛されているのか分からない」と疑問を抱くようになる。
少しずつ疎遠になる心情を「1 Step forward, 3 steps back」(一歩進んでは三歩下がる)と表現している内容となっている。
曲のクレジットを見ると、テイラー・スウィフトとジャック・アントノフの名前が書かれている。
なぜかと言うと、この曲のメロディー・ラインはテイラーの楽曲「New Year’s Day」がベースになっており、それにオリヴィアなりの解釈を加えたものだからだ。
アルバムの歌詞カードのあと書きには、テイラーとジャックに感謝の旨を言葉にしている。
Thank you to Taylor Swift & Jack Antonoff for letting me interpret their masterpiece “New Years Day” for this record.
5. deja vu
キラキラなサウンドで始まる楽曲であるが、歌詞の内容は怖くオカルト的な要素がある。
内容は要約すると「あなたが新しい恋人といるとき、あなたは私を感じる(デジャヴ)でしょ」というもの。
デジャヴとは「過去に体験したことがある気がする」という感覚のことだ。
いわゆる「既視感」ってやつな
歌詞に「女優」と出てくるんだけど、同じくサブリナ・カーペンターのことだね
怖いとかオカルト的要素を感じるのは “Do you get deja vu”(デジャヴを感じるでしょ)という歌詞から分かる。
まるで生き霊のようにそこに存在し感じて、フラッシュバックするのだろうとメッセージを感じ取ることができるのだ。
ミュージック・ビデオで鏡越しにオリヴィアと別の女性が入れ替わったり、映り込んだりするシーンでもわかるので注目だ。
歌詞の中にビリー・ジョエルが登場、「Uptown Girl」(※)を聴いて一緒に歌ってるという箇所があるのだが、実際にオリヴィアはビリー・ジョエルとグラミー賞のリハーサルの際に対面している。
【出典】Billy Joel Instagramより
コーラス部分で“I know you get deja vu”と歌うのだが、そのコード進行がテイラー・スウィフトの「Cruel Summer」の“I love you, ain’t that the worst thing you ever heard?”と歌うコーラス部分が完全に一致している。
パクリではなく、オマージュと表現した方がいいだろう。
6. good 4 u
3音のベースから始まるこの楽曲は、すでにヒットしそうな雰囲気をかもし出している。
クイーンのオペラサウンドを模した様な「Ah~」と所々にバックボーカルが入り、そして次第にテンポが早くなる。
まだ開始30秒なのだが、すでにイチコロだ。
コーラスではエレキ・ギターが荒々しくかき鳴らされる超爽快ロック・ソングだ。
2000年代初頭のガールズロックを彩ったアヴリル・ラヴィーンやベッカを思い出させるこのサウンドは、20年越しに彼女たちの曲を追体験しているような気分になる。
アヴリルやベッカが好きな人には是非おすすめしたい。
曲の内容は「新しい恋人を見つけてよかったじゃん、まぁ私はどうでもいいけど」という失恋から立ち直り、我が道を行く女性の歌を歌ったものだ。
1:11の”good for you~”で薄ら笑いをしながら歌っているところにも注目して聴いてほしい。
この笑いは、元彼に対する皮肉の笑いで「good 4 u」(まぁせいぜい頑張りな〜)とノンバーバルなメッセージを込めているように聞こえるね。
ミュージックビデオを観ると注目点が2点ある。
①その1つがチアリーダーの衣装だ。
【出典】80sradical (@80sradical) Instagramより
印象的な水色の衣装は、アン・ハサウェイ主演の映画『プリティ・プリンセス』(2001年)に登場するキャラクター、ラナ・トーマスが着ているチアリーダーの制服と全く同じだ。
このラナという登場人物は、アン・ハサウェイ演じる主人公のミアに意地悪をするキャラクターだ。
では、なぜオリヴィア・ロドリゴはこのキャラクターの衣装に身を包んだのか?
それは幸せそうにするオリヴィアの元彼と新しい彼女が、映画内の主人公ミアとマイケル(ミアと結ばれる人)の姿に反映されているからだろう。
そしてハッピーエンドを迎える映画と現実の主人公たちに牙を向けるラナとオリヴィアが、生写しのように映し出されているのだ。
そのためオリヴィアは悪役であるラナのチアリーダーの制服を着ている。
「チアリーダー×悪役」という構図は「あんたの恋愛を応援してやるわ」という皮肉の意味も込められているね。
②2つ目が目が赤くなるシーンだ。
ラストシーンで目が赤くなるのは、バッドエンドや悪い方への変化を意味している。
例えばマイケル・ジャクソンの「スリラー」(1982年)のミュージックビデオでは、ラストシーンで振り向くマイケルの目が、ボワっと光る猫目に変化する。
他にも映画『ジェニファーズ・ボディ』(2009年)でジェニファーの目が変化する時に殺人を犯すという描写がある。
オリヴィア・ロドリゴの「good 4 u」における目の色の変化は、これらと同じことが言えるだろう。
燃えていく部屋を背景に笑いながら歌ったり、森の中を去っていくシーンはホラー映画『13日の金曜日』シリーズや映画『キャリー』(1976年)に影響を受けている要素もある。
※ちなみに「good 4 u」のミュージックビデオは Palisades High School という実在する高校で撮影された。
7. enough for you
心地よいアコースティックギターの生音が脳内に流れ込む。
0:34で「drivers license」で聴こえたジェット・コースターを急降下する様なシンセサイザーの音が聞こえてくる。
これは心の波を表しているのだろう。
歌詞の内容からもそう言える。
アコースティック・ギターとベースとシンセサイザーのみで構成されたシンプルなこの楽曲は「恋人に尽くしてきたのにフラれてしまったティーン・エイジャーの乙女心」を歌った内容となっている。
「彼に好かれようと背伸びしてコーヒーの淹れ方を覚えたり、好きな歌を聞いたり、自己啓発本を読んだりしたけど、結局彼は他の人と一緒になってしまった」という歌詞の言葉ひとつ一つからは、ボーイフレンドを満たすために尽くしてきたオリヴィア自身のリアルなエピソードを1番感じる楽曲だ。
実際この曲は、たまたまTikTokで流れてきたカップルの映像からインスパイアされたそうで、Aメロとコーラスは近所を散歩中に作詞したみたいだよ。
先日のライブでは個人的にお気に入りの楽曲って言ってたな。
8. happier
おお、いきなり宇宙的な浮遊感漂うシンセサイザーの音が流れる。
いったいどこまで行くのかと聞き入っていると音量がマックスになった時に、オリヴィアの歌声とピアノの伴奏で歌がはじまる。
この歌は前半の曲とは違い「あなたの幸せを祈ってるわ」という前向きな姿勢で元彼のことを思った曲に仕上がっている。
しかし「私よりも幸せにならないでね」と続く歌詞から分かるように、エゴイスティックな彼女の望みを意味している。
相手の幸せを願うというコンセプトでは「good 4 u」と同じだけど、全く違うアプローチで描いた曲だな。
「good 4 u」がダークさがあるけど「happier」は明るい印象で、まさにコインの裏と表のような2曲だね。
ピアノの伴奏を聴いていて私の頭の中に浮かんできたのは、スキーター・デイヴィスの「The End of the World(この世の果てまで)」(1962年)とルイ・アームストロングの「What A Wonderful World(この素晴らしき世界)」(1968年)の2曲だ。
そして興味深いのが「The End of the World(この世の果てまで)」(1962年)も同じく失恋の歌ということだ。
「The End of the World」を直訳すると「世界の終わり」という意味なのだが、失恋したことが世界の終わりのように感じると歌っている。
一方ルイ・アームストロングの「What A Wonderful World(この素晴らしき世界)」(1968年)は争いがあっても素晴らしい世の中にしていこうよというポジティヴな内容が歌われている。
オリヴィア・ロドリゴの「happier」は、この2つのヒット曲が持っているポジティヴな面とネガティヴな面の要素を持ち合わせているのが面白い点だ。
9. jealousy, jealousy
「good 4 u」と同じ雰囲気を出だしのベースラインから感じ取れる。
ダークで怪しい感じだ。
曲の内容は「SNSで映し出されるキラキラしている人と自分を比べて嫉妬(ジェラシー)を感じ、自己嫌悪におちいっているティーン・エイジャーの女の子」の事を歌っている。
「enough for you」はTikTokを元にして作られたのに対して、「jealousy, jealousy」はInstagramが元になっているよ。
レッド・ホット・チリ・ペッパーズ(以下:レッチリ)やラップの影響を受けている楽曲だ。
それは変幻自在なレッチリのリズムやラップの持つ社会への不満というテーマ、語尾を伸ばす歌い方からわかる。
SNSに疲れ不満をぶちまける歌詞とそれらの音楽が上手いことマッチしている最高の一曲。
10. favorite crime
フォーク調で始まるこの曲は昔のシンガー・ソングライターを思い起こす。
アコースティック・ギターの音色とハーモニーが美しい曲だ。
この曲、ノラ・ジョーンズっぽい歌い方してて面白い
“I hope I was your favorite crime” という歌詞からわかるのは「恋の共犯者」という内容だ。
失恋を恋の犯罪と表現して、そのうえ1番の恋が私だったらいいなと歌うのはどこか切ない。
ボニー&クライドみたいな感じかな。
1:55から始まるオリヴィアのバックコーラスは、音に厚みができ臨場感を出している。
さらに声色もささやき声から一変して、感情が爆発する力強い歌声に変化している。
しかもそれがテイラー・スウィフトに似た声色に変化するのにも注目だ。
「favorite crime」はSpotifyのストリーミング回数10億回を突破。
Spotifyの「Billions Club」に入ったオリヴィアにとって6曲目の曲となった。
「たまらないほど愛してた ひどい仕打ちも受け入れた 自分から進んであなたの恋の共犯者になってた」
— オリヴィア・ロドリゴ Olivia Rodrigo 日本公式アカウント (@olivia_jpn) April 21, 2024
「favorite crime」はアコースティックギターを基調としたバラードで恋愛関係での裏切りや失望をテーマにした楽曲。感情的な歌詞が特徴的で多くのファンに共感されています。
是非、Billions… pic.twitter.com/Fhrv7U49ud
【出典】オリヴィア・ロドリゴ Olivia Rodrigo 日本公式アカウント(@olivia_jpn)Xより
アルバムの歌詞カードを見ると、前曲「jealousy, jealousy」と「favorite crime」が掲載されているオリヴィアの写真が、唯一モノクロになっている。
なぜこの写真が白黒になっているのだろうか?
私の考察だと、「jealousy, jealousy」では自己嫌悪に陥り自分が見えなくなる様子を描いていて、キラキラしたSNSの世界との対極を表している。
そして「favorite crime」では恋の共犯を描いている。
歌詞の中にも “one heart broke, four hands bloody”(心が壊れて、4つの手の平は血に染まる)とある。
これは、血が流れて血色のない状態(=失恋)を表している。
そのため、色のないモノクロのオリヴィアが映し出されているのだ。
11. hope ur ok
冒頭の暗く悲しそうなギターは、ニルヴァーナの「Come as you are」と似たサウンドだ。多分コーラス・エフェクターを使用していると思う。
曲の内容は、昔会った男の子と女の子の2人の人物について歌ったもの。
どちらも複雑な家庭環境に育っており、今では疎遠になってしまった2人に「元気でいますように」というメッセージを曲という形で手紙にした歌だ。
言葉選びのセンスがよく、目に涙を浮かべているという状態を “eyes of salt”、人生のドン底から大成功することを “make a royal flush”(※)と表現している。
このオリヴィア・ロドリゴという人物は、鋭い着眼点を持っているなとつい感心してしまう。
(※)ロイアル・フラッシュは、ポーカーで1番強いカードのこと。
10・J・Q・K・Aで揃い、さらに柄も同じであることが条件になっている。
冒頭のギターから連想したのは、トム・ウェイツの楽曲「Cold Cold Ground」だ。
この曲も孤独や孤立、残酷な現実を歌にしており、「hope ur ok」にある恵まれない環境下にいる子供との共通点がある。つまり、どちらもサッド・ソングの一面を持っている。
そのオマージュを込めて同じコード進行にしたのであろう。
アルバム『サワー』の解説
2021年5月にリリースされたアルバム『サワー』は、オリヴィア・ロドリゴのデビュー・アルバムだ。
解説
【出典】Olivia Rodrigo (@oliviarodrigo) Instagramより
オリヴィア・ロドリゴは2003年生まれのアメリカのシンガー・ソングライター。
フィリピン人の父親とアメリカ人の母親の間に生まれ、4歳の時から音楽と向き合い日々レッスンを受け、10歳の頃にはすでに作曲を始めていたとか。
詳しいオリヴィアの紹介は【入門解説】オリヴィア・ロドリゴ〜新時代のスター誕生物語で解説しているので、合わせて読んでみてくれ。
2016年にディズニー・チャンネルのドラマ『やりすぎ配信!ビザードバーグ』の主役のペイジ役で女優デビュー。
2019年には、ザック・エフロン主演で人気のディズニー映画『ハイスクール・ミュージカル』のテレビ版の『ハイスクール・ミュージカル:ザ・ミュージカル』でニニ役に抜擢される。
劇中で彼女が歌う「All I Want」がヒット。
作詞・作曲も行った彼女は、ここから歌手としての評価が上がるようになった。
Olivia performing “All I Want” at #GUTSWorldTourMelbourne 🥺 pic.twitter.com/HuKKRCQByl
— Olivia Rodrigo Daily (@DailyRodrigo) October 10, 2024
【出典】Olivia Rodrigo Daily (@DailyRodrigo) Xより
オーストラリアのメルボルン公演でサプライズ演奏されたよ。
2021年1月にソロ・デビュー・シングル「drivers license」を発表、全米・全英で1位を獲得。
続く2ndシングル「deja vu」も大ヒットし、初登場8位までチャートを伸ばしていった。
初登場でトップ10入りした、史上初のアーティストになったよ。
そして2021年5月21日、満を辞してリリースされたのが、このデビュー・アルバム『サワー』なのだ。
ソロ・デビュー後わずか4ヶ月でリリースしたこのアルバムは、世界15カ国でナンバーワンに輝くという記録も達成。
2024年4月現在の時点で、アルバムの中の6曲がSpotifyで10億回以上ストリーミングされた。
まさにシンデレラ・ストーリーだ。
💜NEWS💜#オリヴィア・ロドリゴ のアルバム『SOUR』がSpotifyで収録曲6曲が10億回以上ストリーミングされた女性アーティスト初のアルバムになりました✨@SpotifyJP
— オリヴィア・ロドリゴ Olivia Rodrigo 日本公式アカウント (@olivia_jpn) April 15, 2024
『SOUR』をSpotifyで聴く👉 https://t.co/UzPsQYtX8f pic.twitter.com/FmehkqAZgM
【出典】オリヴィア・ロドリゴ Olivia Rodrigo 日本公式アカウント(@olivia_jpn)Xより
まとめ:『サワー』はただの失恋ソングの集まりではない
アルバム『サワー』を聴いて思ったのが、オリヴィア・ロドリゴの爆発力や表現力がすごいと感じた。
全11曲の大半は、「失恋」をテーマにした曲がほとんどではあるのだが、それぞれ違う感情が現れている。
1曲目の「brutal」で最悪なティーン・エイジ・ドリームはどこへ行ったと怒りの感情から幕を開け、2曲目の「traitor」では自由や自立、3曲目の「drivers license」では悲しみ、8曲目の「happier」では前向きな姿勢を表現している。
さまざまな方向から「失恋」を表現しているのがすごく多彩だ。
一方、9曲目の「jealousy, jealousy」やラストを飾る「hope ur ok」は失恋から派生させ、「嫉妬」や「孤独」といったテーマを歌っており、才能をさらに開花させていっている。
正直、本当にデビュー・アルバムかと耳を疑いたくなる完成度を誇る内容だ。
2ndアルバム『ガッツ』も去年リリースされたのでそちらも注目したい!
『ガッツ』のレビュー記事とライブレポート記事もあるから見てね〜
このように日々洋楽の魅力をお届けしているので、ブログをチェックしてもらえると幸いだ。
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それでは洋楽を楽しみましょう。
SEE YOU NEXT WEDNESDAY!!
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