【ライブレポート】oasis live’25 東京ドーム公演で歴史的瞬間を目撃してきた【オアシス来日公演】
とうとうこの日がやってきた、今年7月から始まったoasisの再結成ライブ。「oasis live’25」と題したワールドツアーも後半戦、oasis御一行が降り立った次なる開催地はここ東京ドームだ。私自身2009年の幕張メッセでのライブを見に行ったのが最初で最後であったが、ギャラガー兄弟は16年の歳月を経てここ日本に再び戻ってきてくれた。
本記事は東京ドーム公演2日目(10月26日(日))アジア公演の最後をレポートした記事になっている。ライブに行った方も行けなかった方も楽しめる内容になっているのでぜひ最後まで読んでいただけると幸いだ。
開演前の東京ドームの様子
この日は13時過ぎに会場の東京ドームに到着。現地は常にoasisの楽曲が流れており、周りには野生のoasisファンが集結している。ファン層はこれまた広く、ほぼ全世代いると言っても過言ではない。

主観だが特に40〜50代くらいが多く、次に10〜30代くらいが層が厚い。男女比も半々くらいの印象だ。もちろん海外からもファンも駆けつけており、今日までしか見れない日本でこの光景を撮るため各々が写真撮影に励んでおり、特にドーム正面22番ゲートには順番待ちの列ができていたほどだ。


グッズ・物販の様子
グッズ・物販の列はオンライン販売、渋谷MIYASHITA PARKをはじめとしたファンストアなどライブ前からあらゆる方法で事前に販売があったためか並びの列は緩やか、一方でタワーレコードのCD/LPの物販は特典のメモリアルチケットとクリアファイルを求める列が朝から並んでいたらしく、昼には既に終了していた。

普通に販売したら大混雑だもんな

実は音漏れを聞きに初日25日にも東京ドームへ訪れたのだが終日雨、2日目の昼間は雨は止んでおり先日よりも動線が混雑していない様子だ。
東京ドーム周辺とoasisのファンの様子

今の時期oasisファンは都内を歩いていれば必ず一人は見つけられる。この日は特にそうで東京ドームに向かう途中、丸の内線に乗っている時から既にadidasやoasisのグッズを身につけている多くの方を見かける。

池袋駅あたりからよく見かけたな

いざ最寄りの後楽園駅に着くと改札を出たところにはチケットを譲ってくださいとプラカードを持った方がいたり、会場の周りでも「チケットを探している」と英語で書かれたプラカードを持った海外のファンまでいた。また改札横にはoasis関連の書籍の販売をしているブースまで出来ている。正直ここまで社会現象的に盛り上がっているのはoasis以外に見たことはない。

水道橋の方にはダフ屋がいたそうだよ。
開場時間になり、いよいよ東京ドーム内に入場



日曜日の開場時間は15時。初日よりも30分早くoasisが登場する18時まで3時間あるのだが、それでもこの人の人だかりだ。もちろん東京ドームという規模もあるのだがライブ前でこの盛り上がりはすごい。入場はまだせずに待機している方もかなりの数いた。

私は15時40分ごろに入場。ここまで死守してきたライブのチケットを少しずつ凍てつく寒さの中スタッフさんに手渡す。荷物検査と金属探知のボディチェックをしてもらい、入り口横の福袋特典を受け取り中へ入っていった。
【oasis live’25 in TOKYO DOME DAY2】
— つるミュージック@洋楽専門ブロガー (@tsurumusicblog) October 26, 2025
東京ドームでライブ見るの3回目だけどスタンドは初めて。この眺めも新鮮。
Oasisのために取っておいたと言ってもいい!#oasislive25 #オアシス来日2025 pic.twitter.com/FiLcVYBIRN
東京ドームでライブを見に行くのは3回目なのだが、アリーナ席は初めて。孤を描いた観客席のひとりひとりの視線やヴァイブにとにかく圧倒されるし、もしステージに立つアーティストたちになる事があればそれは感動することだろう。例えるならコロッセオで決闘をする剣闘士のような気分になる。
会場のSEで流れている音楽も魅力的でスレイドやシン・リジィ、フェイセズ、ザ・フーの曲などイギリスを代表とするロックが会場を暖めている。ちなみにラジオDJの深町絵里さんがSpotifyでプレイリストを作成してくださっているので合わせてチェックしてみて欲しい。
できましたー!!
— 深町絵里 (@ERI1121) October 28, 2025
みなさんからいただいた情報を整理してプレイリストにしました!激アツなのができた!
ラストのストーンズだけは変わらず後は違う選曲だったようです。
わかりやすいようにFuckin' in the Bushesで1日目2日目区切ってます!#oasislive25
Oasis 開演前BGM https://t.co/C8yB8fGLZI https://t.co/dUqSsyqKri
【出典】深町絵里 (@ERI1121) Xより
さて一度座席を確認してから、開演まで時間があったため軽い軽食を済ますためにドーム内のショップを色々と探索。フロアごとに販売している軽食のバリエーションは異なりホットドッグやハンバーガーをはじめ、ターキーレッグ、おむすび、クレープなどの販売があった。
Defenderとadidasの広告
30分前に座席に戻ると先ほどよりも埋まっており、常にお客さん同士色々な会話が響き渡っている。今回ノエル・ギャラガー・モバイル(通称ノエモバ)の福袋枠で当選したこともあり周りにいた方達は全員ノエモバ会員で固まっている。隣にいた男性も初期からのノエモバ会員のかたでマンチェスターシティの限定Tシャツを初おろしだと言う。
開演10分前になるとDefenderとadidasの広告が流れ、すでに拍手が巻き起こっている。

“Rock ‘N’ Roll Star”と”Live Forever”のチョイスが良すぎる
サポートアクトのおとぼけビ〜バ〜が登場

17時になると暗転、真ん中の照明を残し「ハローウィーアー、おとぼけビ〜バ〜、ライブハウス東京ドームへようこそ!アーユーレディ!」との一声でステージにはサポートアクトのおとぼけビ〜バ〜が登場した。



私は今年2月のグリーン・デイのライブで初めてみて、これで2回目になるのだがとにかく爆音が激しい。すでに会心の一撃をくらいHPの半分ほどダメージを受けたのだがこれはこれで会場を暖めてくれるので心地がいい。相変わらず曲の合間のMCの内容も面白く、oasis再結成と前座をすることへの感謝、また前座があることへのSNSでの賛否に対するアンサー、人それぞれの価値観の違いなどを語ったのだが、特に面白かったのは「次の曲は袖で見ているであろうマンチェスターのジジイに捧げる」という曲紹介で始まった「ジジイ is waiting for my reaction」の一言。会場からはどっと笑いが起き盛大に会場を沸かせ、30分ぴったりの前座は終了した。
おとぼけビ〜バ〜
— bigok (@bigok4) October 26, 2025
「この曲は袖でみてるであろうマンチェスターのジジイに捧げますwww」 pic.twitter.com/wFiG9ONI6r
【出典】bigok (@bigok4) Xより
oasis登場まで残り30分の間にローディーたちが機材の入れ替えをしているのだが、見えたぞボーンヘッドとペップ・グアルディオラ監督の等身大パネルの登場だ。無表情の頭輝く中年オヤジがまるで守護神かのように5万人のオーディエンスを見守っている。

ん〜、たまらんなボーンヘッド!
ライブ開始
SEで流れていたザ・ローリング・ストーンズの”We Love You”が明け、18時ちょうど。すぐにSNSで見たことのあるスピードメーターが登場。ここでオーディエンスは一斉に座席から立ち上がり歓声をあげスマホのカメラを向ける。映画『未知との遭遇』をオマージュした”THIS IS NOT A DRILL”という赤文字が点灯し、「北北西に注目してくれ」との合図に入場曲“Fuckin’ in the Bushes”が爆音で流れる。コラージュ画像や世界中で大ニュースになった見出し記事、Xの投稿などで構成されたアニメーションが映し出され、ギターソロから少し過ぎたときに上手側からギャラガー兄弟が手を繋ぎ登場した。
軽くハグをしてから所定の位置に着くとリアムがお決まりのひと事を言う!“Oasis vibes in the area”, “TOKYO vibes in the area”(oasisが帰ってきたぞ、東京に来たぞ盛り上がっているか!)
この瞬間での歓声は最高潮、360度全方向から聞こえてくる歓喜の叫びが全身の細胞を震わせる。東京ドーム2日目、最初に放たれた弾丸は“Hello”だ。ワールドツアーはどの国でも同じセットリストでやるという宣言通りで、続く“Acquiese”の冒頭2曲で “It’s good to be back”, “Because we need each other”と再結成で戻ってくるって最高じゃないか、そしてoasisをやるのに俺たち兄弟やっぱり必要だよなと兄弟愛と宣言を感じる出だしを飾った。今回のツアーの幕開けには完璧なセットリストだ。
そして負けじとオーディエンスは全員大合唱。私も気がついたらその場を飛び跳ね、すでに喉を枯らしている。なんだ、なんなんだ、この高揚感はたまらなく素晴らしい。
「アリガトウ」と完璧な日本語を発した。ヘリサウンドのSEが次第に大きくなる中リアムのMCが入り、「いいドームじゃねぇか。マジで美しいぜ。誇っていいぜ、ゴージャスだな。」とサラッと言いい終え始まるのは “Morning Glory”。ヘヴィーなゲムのギターイントロが聞こえた瞬間に再び歓声が上がり、ドラムビートに合わせて手拍子が上がるとそこから終始合唱、特にコーラス前の”Need a little time to wake up”から2倍の大きさになり、ノエルパートの”Well… What’s the story morning glory?”では5倍以上のはち切れそうな大合唱が巻き起こった。
「アリガトウ、日本語には素敵な言葉がたくさんあるってのは分かってる、でも俺はこの言葉だけで最高なんだ。だから一生言い続ける」と言った後に始まる “Some Might Say”では輝かしい未来を再予言したかのような新たな意味合いを持たせた。またここでリアムの十字を切る場面を見れたのだが、祝福を祈願しているかのように見えた。

ペットボトルにちゃっかり中指を漬け込んでんだよなw
『Definitely Maybe』からは2曲続き、「次の曲をすべてのdragonflies(自由に飛び回る奴ら、自由な魂・精神の持ち主たち)に捧げる」(メタファー的な意味)と宣言した後、疾走感のある“Bring It On Down”が始まる。モニターにはスピード感を感じさせる映像が映し出され、メンバーが無数の額にはめ込まれジェットコースターのように奥行きのある演出が素晴らしい。続く“Cigarettes & Alcohol”では、リアムはポズナンを提案。「よし、ビューティフルピーポー(ファンのこと)、これから”ポズナン”っていうのをやる。強制はしない、やりたいなら後ろを向いて隣の人と肩を組んでファッキン気が狂うほどぶっ飛べ」。様子を伺いながらも、皆顔を見合わせ隣の人と肩を組みジョーイのドラムビートに合わせてみな上下に飛び跳ねた。「オイッオイッ!」と掛け声を合わせ5万人のオーディエンスが全員マンCサポーターに変化した瞬間だ。
モニターには「WARNING: ROCK ‘N’ ROLL SERIOUSLY DAMAGE YOUR HEALTH(ロックンロールは、あなたの健康に深刻なダメージを与えます)」とタバコのパッケージの注意書きをオマージュした文字が流れ、ユーモアの効いたイギリスらしい皮肉たっぷりジョークが書かれていたのにも注目したい。
すでに全身汗だく、決して飛んできたビールのせいではない。周りを見ると汗と涙で全員笑顔、全力でポズナンをした日本人にリアムも反応。
「東京であれをやりたいのか?」って言われたんだよ。「いやいやいや、日本人は席にじっと座ってるのが好きなんだ。ポズナンなんてやらねーよ」ってさ。「やってもムダだ、ギャラガーさんよ」なんて言われたんだ。でもなお前ら、見事にその予想をぶっ壊してくれたな。最高だ、おめでとう!」と答えてくれた。

But all I need are cigarettes and TOKYO(俺に必要なのはタバコと東京だけだぜ)ってサラッと歌詞変更してくれたのも最高だったな
間髪いれずに続くのは“Fade Away”と“Supersonic”なのだが、特にジョーイ・ワロンカーのシンブルながらにして力強いビートが個人的にめちゃくちゃ洗練されていてよかった。2009年に観たクリスのワイルドさとも違うし、初代のトニーよりも音の粒がはっきりとしている印象がすごく伝わる。

リアムの”Nobody can ever hear him call”のコーラスの伸びも良かったね
面白い場面もあり、”Supersonic”ではノエルがアウトロをミスったことを冗談半分で「ライブ前にチキン食べんなって言っただろ」とリアムがディスったのもこのシーン。アニキ・ギャラガーはちょくちょくミスるのだが、イントロでも開放弦がなってしまったのはなかった事にしよう。
「次はミスらないから見ててくれ」と言葉で始まるのは “Roll With It”。よく議論がされる”Roll with it”のitは何か、何を転がすのか問題。その答えはここにあると感じた。私たちの生きているこの「地球」、「世界」、「東京ドーム」、ファン一人一人の「心と魂」、ありとあらゆるものだ。そして「人生の歯車を回し続けろ」という意味も持つのかもしれない。曲が終わるとリアムはご主人に尻尾を振って近づく子犬のようにノエルにハグを求め、ここで兄貴とバトンタッチ。
ノエルパート3曲
前半戦のノエルのパートは全3曲。まず1曲目は“Talk Tonight”、アメリカツアー中に失踪事件を起こし、たまたま出会った女性に匿ってもらった出来事を背景がある楽曲だ。ここ東京ドームはoasisにとって初めてのライブ会場。大ベテランでもさぞかし緊張するはずだ。そんな緊張をほぐすかのように演奏中会場を照らしたのは5万通りのライト。左右に不規則に揺れ動く光ひとつひとつにはノエルの心を動かしたものが必ずあるはずだ。
「ムチョス、グラシアス」(本当にありがとう)とスペイン語で一言いった後に始まったのは“Half The World Away”、ブルーの照明で哀愁漂う雰囲気に包まれた会場では合唱。コーラス部分や”Half the world away”と歌う場面ではオーディエンスにマイクのバトンを渡す場面もあったりと感動的なアコースティックナンバーが2曲続いた。

キーボードとトロンボーン、トランペット、サックスの奏でるアウトロも良かったね。

ドラムに合わせて「チャッチャッ」って2回手拍子を打ったのも印象的
「次の曲をSPG(ソニー・パトリック・ギャラガー)に捧げる、今夜が彼にとって最後のライブだからな。GESEやりに学校に戻んないと行けないんだ。気をつけて帰れよ、ソニーボーイ」というMCに続いて演奏したのは“Little By Little”。しっとり系の2曲と違うのはコーラス前からの大合唱。異次元の彼方にいるような気分になる。息子ソニーを見送るにはぴったりの曲だ。
7歳の頃のアナイスの声をサンプリングしたSEに被せ、聞こえてくるビーコン音、その音が次第に大きくなると“D’You Know What I Mean?”が始まる。背後に映るモニターには発煙筒をかざしデモをする男たちと工場地帯がストーリー仕立てに描かれており、2025年版のミュージックビデオを見ているかのようでめちゃくちゃカッコいい。Do you know what I mean?(わかんだろ)はよくリアムが言う口癖なのだが、これがビビッとくる。

スローになるシーンも
ここからバラードが3曲続くのだが、まず『Be Here Now』からは“Stand By Me”が演奏。イントロのスライドギターからすでに歓声が沸き起こり、毎曲お馴染みだがコーラスでは大合唱。”stand by me”(俺のそばにいてくれ)とノエルとリアムが共に歌う場面もグッとくるし、リアムはオーディエンスの合唱を聞くため耳を澄ませてまるで瞑想をしているかのように佇んでいた。
そしてこの流れで“Cast No Shadow”と“Slide Away”が涙腺を刺激する。涙声で歌ったことは一生忘れないだろう。この眉毛ブラザーズの関係性の修復から再結成ツアー、同じステージにいるこの現実が新たな意味合い、解釈を生みだした。リアムがサラッとMCで言った「学校とか先生でなんかじゃなく、全部自分で学んできた」という言葉も過去16年の空白をどう振り返り今こうしているのかを表しているようにも見えた。

東京の”What For”もやばかったな
“Whatever”はこの繋がりにはぴったりな一曲。「何だってできるんだ、その気になりゃばブルースだって歌えんだぜ」第一声が聞こえるとワーキング・クラスの何者でもなかった俺たちが底辺から世界の頂点からまで酸いも甘いも知ってんだ、俺たちができたのならお前らもできるはずさ、と言うメッセージがモニターに映るシングルジャケットの大草原に広がる光景も相まって頭の中に描かれる。
ギャラガー兄弟がビートルマニアなのはご存知の通り、初めてこの曲を聞いた時はビートルズのカバー曲かと思ったくらいだ。そしてなんとアウトロには”Octopus’s Garden”を2節ほど歌ってしまった。大草原に広がるタコさんのお庭がむちゃくちゃピンときた瞬間だった。
「次の曲はここに来れなかった奴らに捧げる、俺らはお前らのこと分かるし、お前らも俺らのこと分かっているぜ」というMCから“Live Forever”、「この曲はすべてのロックスターたちへの歌だ、今夜もめっちゃロックスターがいたよな」と決め台詞を放ち“Rock ‘N’ Roll Star”が続くのだが、歌詞や今のあり方からギャラガー兄弟のこれからを暗示しているかのようにも思える。本ライブで『Definitely Maybe』から演奏されるのはこの2曲で最後なのだが、後半のセットリストがまるで紆余曲折ある主人公の物語が語られているように聞こえた。
それは背後に映し出されるoasisの過去からリアルタイムに至るまでを映し出した思い出のアルバムの様なコラージュアニメーションからもそう読み取れる。
大歓声の中、リアムはアイコンタクトしながらギターを弾くノエルのうなじにキッスをして退場。19時34分前半戦が終了した。
アンコール開始
ブラウン管に映し出された砂嵐風の背景に「live’25」という文字が映し出されたステージ、2009年のライブでも使用された幼きアナイスの声が響く中、oasis御一行の再登場を待つ。その間周りのファンはずっとその場で立って待ち続ける方、座ってひと段落する方、談話に励む方、撮影するのに必死な方など各々がこの瞬間を楽しんでいる。
手拍子と「オアシス」「オエイスィス」と日本語発音とネイティヴ発音での呼び方が混じり合う会場内に響き渡る。19時38分リアムを除いたメンバーが集合すると、特に衣装チェンジがあるわけでもないのだが、ここでノエルによるメンバー紹介がされた。
ありがとう、みんな拍手で迎えてくれ。
ギターのゲム・アーチャー、ベースのアンディ・ベル、ドラムのジョーイ・ワロンカー、そしてもう一人のギター、マイク・ムーア、キーボードはクリスチャン・マッデンだ
アンコール一発目に披露したのは“The Masterplan”、アコースティックギターのイントロから始まりそれまで興奮していたオーディエンスも演奏を聞くのに一度静まりかえる。ただこの瞬間も束の間、コーラス付近になると360度あらゆる方向から一斉に合唱しだすのがすごく面白い。ノエルの演奏を支えるゲム、アンディ、ジョーイ、マイク、クリスチャンもそうだが注目したいのはトロンボーン、トランペット、サックスの3管部隊。2009年のライブ時にはなかったと記憶しているのだが、これがオリジナルに近い交響曲のような壮大なサウンドを作り出しているのがすごく染み渡ってきた。
ラスト3曲は今年発売30周年を迎えた『(What’s the Story) Morning Glory?』からのナンバーだ。まずは“Don’t Look Back In Anger”、初めて聞いた時は”Imagine”にしか聞こえなかったあの曲も気がついたらそれよりも聞いている。イギリスの世界の、いやこの地球のロックアンセムだ。イントロが流れると地鳴りが聞こえるのではないかと思うくらいの歓声が湧き上がり、両手をあげ終始大合唱。コーラスパートではモニターにはオーディエンスが映し出され、oasisと日本のファンが完全に一心同体になった。そしてこの大合唱、私が聞きたかったのはこれだ。前回oasisとしてライブを行った時はしっとりアンプラグド・バージョンだったのだが、今回はその事を払拭するくらいの声量でドームを響かせることができたのは最高の気分だ。ちなみにドームの外に音漏れは余裕でして、外で聞いていた方も歌っていたそうだ。
リアムが登場し始まるのは“Wonderwall”、全体的にブルーの照明でライトアップされたステージには星空に浮かぶ”ワンダーウォール”という名のフォトフレームが映し出される。ここで象徴的なのは左右に分かれたモニターにギャラガー兄弟の並びが映されるところだ。お前は俺のことを理解しているし、俺がお前のことを救える救世主だという解釈は今回の再結成における魂で結ばれた兄弟の仲を表しているようにも捉えることができるだろう。そしてコーラスパートではオーディエンスに受け渡し大合唱が巻き起こり、アンサー部分でリアムが歌うのだが、私たちファンが救世主になったと証明できた瞬間でもあった。
「聴いてくれ東京!これがラストの曲だ!もう30年もここに来てるんだぜ。お前らはずっと最高だぜ、マジで特別な場所だ!ずっと俺たちを支えてくれて、ホントありがとな!感謝してるぜ。俺らってよ、たまにバカやったりしてさ、こんなに愛されるほどの価値ねぇかもしれねぇけど…わかるだろ?ほんとにありがとう!「Champagne Supernova」だ!愛してるぜ、東京!」というMCを冒頭にゆったりと波の音が聞こえてくると“Champagne Supernova”が始まる。
夢の時間、天国にいるような何の悩みもない全ての罪が洗い流される楽園が音から表現されている。驚いたのはステージ中央に映し出されたアニメーションに富士山らしき山が映し出されたこと。世界中をツアーで周っいるのもあり途中にピラミッドやモニュメントバレーが登場したり、『八十日間世界一周』をオマージュしたかのような気球が雲をかき分けて飛んでいったりするシーンも見受けられた。歌の意味不明な歌詞ではあるのだが、理由はないがつい口ずさんでしまうし、歌に込められた彼らの頭の中の世界がアニメーションで表現されていたのではないかと感じ取れる。
最後には水平線に沈むサンセットが映し出され、リアムは観音菩薩の様にした帽子の上にタンバリンを乗せじっと観客席を見渡す。禅マスターと名乗っているところからも彼は我々の守護神なのかもしれない。アウトロを弾き終わり両手を大きく広げた眉毛兄弟は、「お前が来い」とどちらも譲らないリアクションを取りつつもビッグブラザーのビッグハグを5万人の前で兄弟愛を見せつけた。
拍手で見送られたギャラガー兄弟、ゲム、アンディ、ジョーイ、マイク、クリスチャン、彼らには笑顔が常に溢れていた。夕日に沈む太陽を残してライブは終了した。
20時3分、予定よりも12分ほど早いエンディングであったが、日本での夢のような時間はあっという間、まさにTime Fliesだ。
終演後の東京ドームの様子
ライブが終わった瞬間というのは毎度高揚感に満ち溢れるのだが、今回のoasisは格別だ。ここにいる5万人全員が同じことを思っただろう。何せチケットを手にするだけでも相当な倍率を勝ち取らなくてはいけなかったし、16年もの間oasisという今世紀最大のロックバンドが再始動したのだからだ。
終演後周りを見渡すと規制退場ということもあるのだが、その場に残り記念撮影をしている方がとても多い。この場を離れたくないと無意識に五感が叫んでいるのがひしひしと感じるのだが、行かなくてはならない。
会場の外に出ると傘がいらないくらいの小雨が降っており、皆会場の前で撮影をしているし、グッズに並ぶ列も少なからずできていた。もちろん真っ直ぐ帰路に向かう方もいるが、私はやはりソワソワしてしまう。ボン・ジョヴィやクイーン+アダム・ランバートでいったことがある同じ会場なのにoasisは別格だ。
oasis live’25のセットリスト(2025年10月26日(日) 東京ドーム)
| 項目 | 曲名 | 収録アルバム・シングル |
| イントロ | Fuckin’ in the Bushes | 『Standing on the Shoulder of Giants』 (スタンディング・オン・ザ・ショルダー・オブ・ジャイアンツ) |
| 1 | Hello | 『(What’s the Story) Morning Glory?』 (モーニング・グローリー) |
| 2 | Acquiese | 『The Masterplan』 (ザ・マスタープラン) |
| 3 | Morning Glory | 『(What’s the Story) Morning Glory?』 (モーニング・グローリー) |
| 4 | Some Might Say | |
| 5 | Bring It On Down | 『Definitely Maybe』 (オアシス) |
| 6 | Cigarettes & Alcohol | |
| 7 | Fade Away | 『The Masterplan』 (ザ・マスタープラン) |
| 8 | Supersonic | 『Definitely Maybe』 (オアシス) |
| 9 | Roll With It | 『(What’s the Story) Morning Glory?』 (モーニング・グローリー) |
| 10 | Talk Tonight | 『The Masterplan』 (ザ・マスタープラン) |
| 11 | Half The World Away | |
| 12 | Little By Little | 『Heathen Chemistry』 (ヒーザン・ケミストリー) |
| 13 | D’You Know What I Mean? | 『Be Here Now』 (ビィ・ヒア・ナウ) |
| 14 | Stand By Me | |
| 15 | Cast No Shadow | 『(What’s the Story) Morning Glory?』 (モーニング・グローリー) |
| 16 | Slide Away | 『Definitely Maybe』 (オアシス) |
| 17 | Whatever / Octopus’s Garden | 『Whatever』/『Abbey Road』 (ホワットエヴァー)/(アビイ・ロード) |
| 18 | Live Forever | 『Definitely Maybe』 (オアシス) |
| 19 | Rock ‘N’ Roll Star | |
| アンコール | ||
| メンバー紹介 | ||
| 20 | The Masterplan | 『The Masterplan』 (ザ・マスタープラン) |
| 21 | Don’t Look Back In Anger | 『(What’s the Story) Morning Glory?』 (モーニング・グローリー) |
| 22 | Wonderwall | |
| 23 | Champagne Supernova | |
まとめ:歴史の目撃者になった特別なライブ
昨年再結成を発表したoasis。SNSで流れてくるライブ映像はこの半年間目には入ってきてはいたが、実際に目で見て体験するまでは信じることができなかった。しかしoasisは存在した。この目で見て感じた、同じ空間に居たし感動を与えてくれたのだ。
私自身2009年3月29日に見た以来のoasis、実に16年6ヶ月27日ぶり、時間に直すと145,176時間ぶりに彼らを見た。ソロとして活動していた期間はどうしても見ることができず、この間ずっと再結成を望んでいた。そして夢が叶ったのだ。どうやって関係性を修復したかは定かではないが、もはやそんなことはどうでもいい。あのマンチェスターのギャラガー兄弟が2人揃って日本にやってきた、しかもめちゃくちゃ笑顔。彼らの音楽、演奏、言葉から誰しもがエネルギーをもらえたはずだ。
oasisがいなかった16年から、oasisがいる世界線に生きている今を日々噛み締めて生きていこうと思う。
LIVE FOREVER!!
