【ライブレポート】MR. BIGの最後のライブ「The BIG Finale! Forever In Our Hearts」日本武道館公演は感動ロック劇場だった。

2023年から2024年に渡り「The BIG Finish Farewell Tour」という全世界を廻るワールドツアーで幕を閉じたMR.BIG。しかし、なんと彼らは愛すべき日本の地で2公演限定のライブを行い完全にピリオドを打つというニュースが飛び込んできた。その名も「The BIG Finale! Forever In Our Hearts」というライブ。
彼らがやってきたのは2023年7月以来、1年7ヶ月ぶり。そして私自身も彼らのライブに行くのは初めてだ。最初で最後のMR. BIGを体験してきたのでここにレポートする。
ライブ前の会場の様子

最終公演の地、武道館には13:40に到着。入り口の前では「MR.BIG The BIG Finale! Forever In Our Hearts」と今回のファイナルツアーの題目を写真に収めようとギャラリーがズラリとできている。3連休が明けた平日初日にも関わらず、すでに多くのファンが集まっていた。
物販にはすでに200人くらいの行列が出来ていた

さらに奥へ進み一際賑わっているかと思えば、そちらはグッズ販売の列。すでに200人くらいの先客がおり、私も合流。10分後には4列編成に変更され、武道館の階段を上がることができた。
MR. BIGのファン層は老若男女と幅広い。上はおそらく70代くらいで下は高校生が多い印象で、グッズ販売の列でも事前に用意した軽食を持参している方や無言で静かにひたすら待つといった方達が多く見受けられた。14時を過ぎた辺りからサウンドチェックをしているのか、マイクで喋っている声やバスドラムの低音が場外まで響いてくるのだが、どうやら興奮してのは私だけのようだ。


15時32分、立ち往生だった列がやっと動き出し、最終的に購入できたのは16時15分。2時間半弱、照り下ろす日差しの中立ちっぱなしでライブ前なのにすでに疲労がある。いや、MR. BIGを見るためならこんなもん惜しまない。
私が購入できた後もグッズ販売の列は収まることなく、キーホルダーやタオルなど比較的手頃な商品から売り切れになっていった。



公式グッズだけでなく、タワーレコードのコーナーではCDやLPの販売エリアも設けられてて、購入すると2,000枚限定の最新シングルも付いてくる特典付きだったぞ。
会場周辺のMR. BIGファンの様子

物販先行販売開始16時頃からすでに数百人以上のファンがいたが、日が陰り開場時間18時に近づくと武道館の周りはファンで埋め尽くされているほどになっていた。グッズを購入し、すぐさま着がえる人もちらほら伺える。
いよいよ入場
会場入る時のこの瞬間が地味に好き。夢の世界に来たような気分になれる。#MRBIG #budokan pic.twitter.com/TVptfxUN4C
— つるミュージック@洋楽専門ブロガー (@tsurumusicblog) February 25, 2025
エアロスミスといったアメリカンロックの王様からトム・キーファー、ニルヴァーナ、ガンズ・アンド・ローゼズがBGMで流れる場内。神聖な武道館という会場はすでに陽が落ちてる場外とは違い、天井から照らす照明のおかげで昼間であるかのように明るく、全体にはスモック立ち込め、ステージにはブルーの照明が差し込み緊張感が漂っている。


楕円形の渦が巻かれたステージ装飾はまるでタイムマシンに乗り時空旅行をするようで、今か今かと楽しみである。
まばらだった客席も徐々に埋まっていき、制服姿の学生、仕事終わりのバックを持ったサラリーマン、長年のファンであろう夫婦と入念に準備しバンドTシャツを着てる人、松葉杖をついてくる方までいた。どれだけMR.BIGは愛されているのかとそのアティテュードから伝わるのだ。
18時30分過ぎにはサウンドチェックがされ、一瞬視線がステージに集中する瞬間もうかがえた。その10分後にアナウンスが行われてカウントダウンが一刻一刻と迫ってくる。

双眼鏡を使ってみるとローディーがスマホで観客席を撮影してるのを見れたよ。
ライブ開始
19時になり、いよいよMR. BIG最後のライブが始まる

開演時間19時になると拍手喝采、ラッシュの楽曲が流れまだ出て来ないかと手に汗握る中、ビートルズの「ロックン・ロール・ミュージック」と共に舞台裏のロビーから会場に移動してくるメンバーがモニターに映し出された。19時を3分過ぎた頃であった。

ノリノリのエリック、笑顔のメンバーを、見れたぞ。
どっと沸く会場には再び拍手歓声のラブコールが響く。

ブルーの照明に照らされたステージにシンセサイザーの「ゴゴゴゴ〜」とSEが聞こえる中、メンバーが登場し、突破口の「Mr. Gone」で幕を開ける。3rdアルバム『バンプ・アヘッド』からのナンバーだ。AOR的要素のあるメロウな楽曲だが、エリック・マーティンのソウルな歌声は順調そのものだ。徐々に加速していきブルース色の強い「Good Luck Trying」が赤を基調とした照明の中演奏される。

「トウキョウー!ブラザーズ&シスターズ、ファンの皆よ、MR.BIGが戻ってきたぞ!」とエリックのMCから「Price You Gotta Pay」へと繋がる。演奏中彼はリズミカルに腰を振り踊りをするだけでなく、ビリーのハーモニカの演奏中はベースを弾いたり、ポールとロックなコミュニケーションをとっていた。そして前屈みのシャウトで締めるというスイッチ全開で好調な出たしを披露した。
「楽しんでるかい、トウキョウ。みんなは俺たちの “Big Love”だ」という紹介で入ったのは「Big Love」。白とピンクの組み合わせの照明の中にはダイヤモンドのように硬いハート型の照明も映し出され、ビートに合わせクラップするオーディエンスとの一体感をひしひしと感じる。

続く「Temperamental」でも掛け声を合わせる場面があり、より硬い絆が結ばれていると理解できるのだ。ここまでは『バンプ・アヘッド』の楽曲が多く、当時ツアーに行った思い入れのあるファンにとっては青春のサウンドトラックを聴いている気分になれたであろう。

エリックは映画『ベスト・キッド』の鶴の舞のポーズをして会場を沸かしていたね

最新アルバム『テン』から「Up On You」、『リーン・イントゥ・イット』から3曲続けて「Green-Tinted Sixties Mind」、ギター・ソロからの「Alive and Kickin’」、「Daddy, Brother, Lover, Little Boy (The Electric Drill Song)」(通称:ダディブラ)へと架け橋のように時代が1991年へとタイムスリップする。
演奏前に「今夜は新曲から昔の曲までほとんど全部やるよ、可能な限りね」と宣言していた通りで往年のファンから最近ファンになった方全員が満足できるナンバーが続く。
【MR. BIGラストツアー】
— つるミュージック@洋楽専門ブロガー (@tsurumusicblog) February 25, 2025
ポール・ギルバートとビリー・シーンのダブルドリル奏法聴けて最高!#MRBIG pic.twitter.com/wtmcvfM0n8
モニターにはアンディー・ウォーホルのアートをオマージュした様なカラフルなMR.BIGのロゴからコーラやタバスコ、ポテトチップスなどが映し出され、「ダディブラ」の時はマキタ製のドリルを神聖なる万物を手に取とるように弾きたおす。その背後ではポールの書き下ろしイラストが動き出すという面白い演出が施されていた。
曲の終わりにはエリックは”俺にエナジーをくれとばかりに”オーディエンスに向かって耳を傾ける仕草をして盛り上げ隊長として武道館を支配している。
アルバム『ワット・イフ…』からの「Undertow」で一気にダークトーンの重い雰囲気にのまれるのだが、パットの後任ドラマー、ニックのパワフルなドラムが鼓膜から脳裏へビートが直撃、ギター・ソロでは集中砲火で完全に打ちのめされた。

シリアスなアメリカンコミック風の映像も歌詞の内容と連動しててシビれたな〜
ライブ中盤からメドレーに変化


舞台袖にはけていくエリックを見送り、ニックのドラム・ソロからポールとビリーのインストルメンタル・メドレーが始まる。おそらく後半戦のためにエリックの喉を労ってのことで組まれたメドレーであると思われるが、一曲でも多く日本のファンにMR. BIGの曲を届けたいというバンドメンバーからの意向でもあるだろう。ここでは以下の楽曲がメドレーで組まれていた。
- Wind Me Up
- Mama D.
- Out Of The Underground
- Merciless
- Anything For You
- Voodoo Kiss
- The Whole World’s Gonna Know
- How Can You Do What You Do
- Take A Walk
- Defying Gravity
インストは10曲のリフ(イントロ)の部分をつなぎ合わせたアレンジなのだが、ポールが中心となりブルースとハードロックの融合が気持ちよく炸裂。ステージ中央にスーパーベーシスト、スーパーギタリストが並び、阿吽の呼吸で行われる音のキャッチボールは異次元のコミュニケーションをしているかのようだ。

ステージでは青や黄色、赤、ショックピンクなど色の照明が曲が変化するたびに切り替わり、その間オーディエンスの視線は彼らの演奏に釘付け。頭の先から体を小刻みに揺らし、曲によっては手拍子が鳴り響いた。

ビリー、ポール、ニックの最強トリオが完成してたよな
映画『ロッキー』のテーマから始まるポールのギターソロ
【MR. BIG Day2@武道館】
— つるミュージック@洋楽専門ブロガー (@tsurumusicblog) February 28, 2025
映画『ロッキー』のテーマ曲から始まるポール・ギルバート(@PaulGilbertRock )のギターソロ。
スライドバーをはめて繰り出すブルースのグルーヴがたまらん。#MRBIG pic.twitter.com/05le6PAa0I
メドレーが終わるとスポットライトがポールに集約。映画『ロッキー』のテーマ曲「Gonna Fly Now (Theme From “Rocky”)」をアレンジしたギターソロが始まると観客席からは無数のクラップがリズムを刻む。5分間に及ぶポールの演奏は「Stay Together」「Green-Tinted Sixties Mind」「To Be With You」を組み合わせたもので、大きな手のひらを下から上へ掘り起こす仕草を見せたときには拍手喝采の大盛り上がりになった。
「Colorado Bulldog」で開けるライブ後半戦
ビリーの野太い「ポール・ギルバート!!」一声から、紅白のフラッシュが観客席に降り注ぎ始まる「Colorado Bulldog」で一気にドライブ感全開、アクセルは踏みっぱなしでコーラスではシンガロングが巻き起こった。私の左右にいたファンは終始吠えまくっており、まさに”コロラド・ブルドッグ”を体現している。ロックは永遠の若さの秘訣なのかもしれない。

汗で熱った顔に手を当てるエリックは「月はどこにある?ああそこか」とスポットライトを指差し、「Promise Her The Moon」へと繋がる。星空が映し出されるモニターに合わせるように会場全体ではスマホのライトをつけて左右に揺れ動く。バンドが月ならば我々はそれを映えさせ支える星なのである。続く「Take Cover」の “Save My Soul” という歌詞で再度大合唱が起きるところからもファンを超越した友達、家族になれるのだ。
【MR. BIG The BIG Finish! at Budokan】
— つるミュージック@洋楽専門ブロガー (@tsurumusicblog) February 28, 2025
エリック・マーティンの日本語が可愛い。
「どうも、ありがっと」
「何度も日本に来てるけど、ちょっとしか喋れなくてごめんよ」#MRBIG #ミスタービッグ pic.twitter.com/79hdGPAMhG
エリックの軽いMCの後には、キャット・スティーヴンスのカバー「Wild World」で本日最初のアコースティックナンバーが披露。
高速のハンマリングベースで始まる「Addicted To That Rush」急発進のロックナンバーに合わせ”Wo-Oh”と拳を突きあげ雄叫びをとどろかせるオーディエンス。さらにエリックの「Are you addicted that rush?」の掛け声に対し「Yeah!!」とオーディエンスとのキャッチボールも行われたり、メンバー同士での掛け合いも見られ、もう我々は完全MR. BIG中毒になっている。
ビリー・シーンによる異次元のベース・ソロ〜「Shy Boy」
ビリー・シーン(@BillyonBass )のベースソロ。いったい何が起こっているのか、こんな風にベースを弾く人は初めて見た。脳の処理能力が追いつかない。#MRBIG pic.twitter.com/z2tz9RNjWp
— つるミュージック@洋楽専門ブロガー (@tsurumusicblog) February 28, 2025
立て続けにビリー・シーンによるベース・ソロ劇場が始まる。ベースのボディーをたたくところからソロは開始、映像で観たことはあるが実際に生演奏を見るといったいどこからそんな音が出るのか不思議で仕方がない。ハンマリング、プリング、チョーキングに加えライトハンド奏法を披露。
4弦でエディ・ヴァン・ヘイレンをやってのけてしまう姿には皆唖然だ。泣く子も黙るというのはこういうことだろう。我々はただひたすら拍手を送ることしかできないのだ。7分間に及ぶソロの途中では、フットペダルを駆使しシンセサイザーの音を出しオーケストレーションが出来上がっていたのは、クイーンのブライアン・メイのそれに匹敵するだろう。

ベース・ソロから「Shy Boy」に流れはもって行かれる。ビリーが在籍していた初期のバンドのタラス(Talas)からのナンバーでメインボーカルがビリーに切り替わり、狼の遠吠えのようなハイトーンヴォイスを聞かせてくれた。

コーラスの”shy boy, shy boy”でみんな拳を突き上げてたね!
最新シングル「Forever In Our Hearts」を披露

演奏後のエリックは舞台袖からパットが中心に描かれたメンバー写真入りの日本国旗を持ってきてくれた。これに対してビリーは「今まさに完璧なフラッグになったね」とコメント。エリックも「ありがとうジャパン。ビリー、ポール、パット、ニック。僕らはいつまでもに心の中にいるよ」止まらぬ拍手喝采がコメントに被すように武道館を響かせる。

MCの後に披露されたのは、世界中のMR. BIGファン、日本への愛、亡きパット・トーピーへの愛が込められた「Forever In Our Hearts」。オーディエンスはこれに合わせ自然とスマホのライトを点灯、振り子のように体を左右に揺らしながら “光り輝くBIGな愛” を表現した。20時43分、一旦ここで後半戦が終了した。
アンコール開始

暗転した会場には赤くMR. BIGのロゴが左右2箇所のモニターに映し出さる。ここまで1時間40分以上も立ちっぱなしだったので座席に座るのだが、場内の拍手は止むことはなく、場内は360度共鳴している。私の周りではここまでの感想をひたすら語る者、叫びすぎて喉を潰している者、写真に今この瞬間を納める者など色々な方がそれぞれ安息の時間を過ごしている。
20時45分、意外と早いアンコールの登場で不意を突かれた我々。衣装チェンジを済ませ、エリックのMCとメンバー紹介が始まる。
1989年以来、僕たちは素晴らしい時間を過ごしてきました。そして今2025年です。計算してみてくれ…かなり長い時間だよね。
そして、これがちょっと辛い瞬間でもあります。なぜなら、これが最後の機会になるからです。もうすぐ涙がこぼれそうで…いや、確実にこぼれるだろうね。

レディース&ジェントルマン、弾丸よりも速く、機関車よりも力強く、高いビルも一気に飛び越える!鳥か?いや、飛行機か?いいや、ポール・ギルバートだ!
沸く歓声と拍手の中、「どうもありがとう、トウキョウ」と日本語で返していた。

この若きジェントルマンを紹介しよう。ここにいる若き青年は、3年間僕たちと一緒に素晴らしいロックンロールの仕事をしてくれました。もう新入りじゃないよ、そして最高にクールなシャツを着てるよ。ほら「東京」って、そこに書いてあるww
くそっ、でかいスクリーンに映るお前、めちゃくちゃカッコいいぞ!そうだ、ついにここにたどり着いたんだ、兄弟!さあ、みんな、大きな拍手を!ニック・ディヴァージリオ!
エリックはニックにドラムロールを指示、そしてビリーの紹介へと入っていった。

すべてを創り上げた男、最初に電話をかけた男。最初は僕に、それからポール、それからパット、そして今はニック。
Mr. Big、Mr. Bad、Mr. Ballsy(度胸満点)、Mr.Bodacious (イカした男)今から汚い言葉を言うけど、気にしないぞ。地球上で最強のクソヤバいベーシスト(マザー・ファッキン・ベーシスト)!レディース&ジェントルマン、ビリー・シーン!
メンバーそれぞれの紹介の後は大歓声と拍手はもちろん、あたりを見渡すと声の出しすぎで咽せる人、指笛をする人など感極まるファンが大勢いる。バンドと同じ景色を見てみると、なんて幸せなんだろうともらい泣きしてしまうほどだ。
そして、この流れで大名曲「To Be With You」の演奏に入るとシンガロングと手拍子が巻き起こる。注目したいのはスクリーンに映るドキュメンタリー風のアニメだ。この曲が出来てラジオで注目を浴び全米No. 1になるまでの背景が描かれている。そしてポールのギター・ソロが始まると偶然か、日の丸が背景に映し出されBIG IN JAPANの象徴のように見える瞬間がうかがえる。映像の最後には以下のコメントも映されていた。
“TO BE WITH YOU” WAS #1 IN OVER 27 COUNTRIES.
(”TO BE WITH YOU”は27カ国以上で1位を獲得しました。)
THANK YOU FOR MAKING US PART OF YOUR LIVES FOR MORE THAN 34 YEARS.
(34年以上にわたり、私たちをあなたの人生の一部にしてくださり、ありがとうございます。)
アコースティック・バラードに続きアルバム『リーン・イントゥ・イット』のパワー・バラード曲「Just Take My Heart」へ。2曲連続でバラードとは、涙を誘うセットリストを戦略的に組んでいることは間違いないだろう。
恒例のパート交換セッションへ
毎度恒例となっているパート入れ替えセッションは、ビリーのMCで紹介で始まる。
これはショーの中でも特別な時間だ。ここから俺たちは楽器を入れ替えて…なんてことはしない!冗談だよ。なぜなら、ベースギターには、偉大なるベースギターの達人がいるからだ。これから彼がその腕前を見せてくれるぞ。ハンマリングオンをやってくれ、エリック。さあ、見せつけてやれ!
(ピロピロピロ…)
言っただろ?そうだ、その通り。偉大なるベースギターの達人、ミスター・エリック・マーティン!

そして、まるで悪魔のようにギターをかき鳴らし、天から降りてきた星々が散りばめられたジーンズを履いた男…そう、シュレッドの王者、自らの手で6弦ギターをかき鳴らす…ニック・ディヴァージリオ!
(ギュイーン、ジャガジャン)

準備はいいか?ドラムにいるのは、皆さんの度肝を抜く、ポール・ギルバート!
(タタンッタタンッタタン、ドン)

…まあ、そんな感じで。よし、それじゃあ曲をやるぞ。前回東京でやった時も演奏した曲だから、覚えているかもしれないな。歌詞はたった5つの単語だけだ。
全部同じ単語だから、忘れる方が難しいぞ。それは、「Yeah, Yeah, Yeah, Yeah, and Yeah」だ!だから俺が「Yeah」×5 って言ったら、みんなも「Yeah」×5 って返すんだ!さあ、やってみよう!
ここでラスカルズの「Good Lovin’」がある意味即興?で演奏される。ボーカルはビリー・シーンで今回2度目のメインボーカルになり、後ろに仰け反りながらもピッチのズレないパンクな歌声を披露。半分お遊びみたいなパートであるが、オーディエンスの「Yeah」と5回歌うところは完璧に息が合い不思議と調和が取れている。
担当楽器を元に戻した後もカバーは続きザ・フーの「Baba O’Riley」で幕を閉めると思われたが、後もう一曲と指を立てるジェスチャーをみせ「I Love You Japan」を最後の最後に披露。”I Love You Japan”での拳を高々にあげ叫ぶオーディエンスから分かるように、日本との硬い絆が結ばれた。

大量のピックを投げてたよ!

ギター・ソロでもう一度電動ドリル奏法みれたの最高すぎたな!
ビリー・シーンによる感動のラストスピーチ

全曲演奏し終わった後には拍手で迎えられながら、メンバー4人横並びになりお辞儀をして締めた。ポールやニックは比較的笑顔であったが、エリックは何度も両手で顔を抑えては必死に涙を堪えていた。


ビリーにマイクが渡されると、7分以上の感謝のスピーチとメンバーとの出会い、マネージャーやクルーへの感謝が語られた。彼のスピーチは以下のように続く。
今日は本当に感動的な夜だ。この瞬間は、俺たちにとってとても特別なものなんだ。長年にわたって日本をツアーしてきたけど、アメリカ人の俺たちにとって、ここに来て日本の素晴らしい文化を体験できることは、本当にかけがえのないことだった。
信じられないほどの優しさと寛大さ、美味しい食べ物、そして何よりも、俺たちにいつも優しくしてくれる最高に素敵な人たち。みんなのおかげで、俺たちの人生は永遠に変わった。ここに来ることで、俺たち全員の人生がもっと素晴らしいものになったんだ。
感謝しなきゃいけない人が本当にたくさんいる。特に、ウドー音楽事務所には特別な感謝を伝えたい。彼らがいなかったら、そもそも日本に来ることすらできなかったし、最初の頃からずっと俺たちを支えてくれた。そして今夜まで、ずっと俺たちと一緒にいてくれたんだ。心の底から、この経験を可能にしてくれたことに感謝しているよ。
そして、俺たちを支えてくれた多くの人たち——
プレスの皆さん、Masa Ito(伊藤政則さん)、BURRN! Magazine、そして俺たちの味方でいてくれたたくさんの人たちにも、本当に感謝している。
でも結局のところ、何よりも素晴らしいのは、ここにいるみんなと俺たちが築いてきた、かけがえのない友情だ。俺は「ファン」って言葉を使うのが好きじゃない。みんなは俺たちの「友達」なんだよ。
友達というのが俺の正直な気持ちだ。街で会ったときに話したり、時間があればサインをしたり、いつもみんなが俺たちに優しく接してくれる。
そして、これまでにみんながくれたたくさんの贈り物——
俺たちの家には、みんなからもらったプレゼントが今もあるんだ。ずっと大切に取っておいて、日本の素晴らしいファンのみんなのことを思い出しているよ。本当に驚くほど素晴らしいよ。
36年前に日本にやって来て素晴らしい冒険が始まった。今夜限りでもうMR. BIGはプレイしないけど、みんなこれから先も音楽活動を続けるよ。いつかどこかで皆んなと必ず会えると確信している。俺たちの心は満たされてるしMR. BIGの歌は永遠に俺たちの心の中にあり続けるよ。なぜなら皆んなも俺たちの心の中にいつもいるからね。

ポールはかなり日本語が上手いんだ。彼は俺にたくさんの日本語を教えてくれたよ。
ギターを担当するのは、俺の最も親しい友人のひとりであり、この地球上で最高に素晴らしい人物のひとり。驚くほどジェントルマンで、圧倒的な才能を持つ男、ミスター・ポール・ギルバート!
俺たちは本当に幸運だったよ。ニック・ディヴァージリオに出会えたことがね。もちろん、俺たちは大きな悲劇を経験した。みんなも知っている通り、パット・トーピーを失った。彼はあらゆる面で MR. BIGの要だった。
本当に素晴らしい人だったし、彼を失ったことは悲劇だった。俺たちは、どうやって続けていけばいいのか分からなかった。でも、パットと同じく人格者で、素晴らしいプレイヤーのニックに出会えた。
ニック、君がこのバンドに加わってくれて、素晴らしい演奏と歌を届けてくれて、本当に感謝してる。ありがとう、俺の兄弟。ミスター・ニック・ディヴァージリオ!
何年も前のことだ。俺はマイク・ヴァーニーと電話をしていて、リードシンガーを探していたんだ。
「すごいギタリストのポール・ギルバートがいる。驚異的なドラマーのパット・トーピーもいる。でも、シンガーが必要なんだ。誰かいないか?」すると彼はあるシンガーの音源を流してくれた。「うーん…ちょっと違うな」別のシンガーも聴かせてくれた。「いや、これも違うな」
そして、もう一人。「おいおい、ちょっと待て!今の誰だ?誰だ?」「マーティンだよ」「聞いたことないな。何をやってるやつなんだ?」「めちゃくちゃ歌が上手い。ベイエリアにいるよ」「マジか?連絡先を教えてくれ!」
そして、俺はエリックに連絡を取った。最初の何曲かを歌ってもらった瞬間、もう分かったんだ。彼の歌声、ソングライティング、ステージでの存在感…間違いない、この男こそMR. BIGのシンガーだってな。
エリックの才能と声のおかげで、彼が共作し、歌った 「To Be With You」 は世界中へと羽ばたいた。俺たちは彼の才能に心から感謝している。これ以上何を言えばいいか分からないが…エリック、君は本当に素晴らしい才能の持ち主だ。
このバンドに参加してくれてありがとう。そして、君の歌声を世界に届けることができて本当に嬉しいよ。なぜなら世界は君の声を愛しているからだ!
そして、俺たちのマネージャーのティムにも感謝しなきゃいけない。ティム・ヘインだ。もしかしたらみんなは彼のことを知らないかもしれない。でも、彼こそがすべてを動かしてくれている男なんだ。彼なしでは、俺たちはここに来ることすらできなかった。ティム、これまでのすべてに感謝するよ。俺たちのために戦い、支えてくれて、本当に素晴らしい男だ。
そして、ツアーマネージャーのクレイグ、クレイグ・ブラッドフォード も今夜ここに来てくれている。俺たちのクルーは最高だ。彼らなしでは何もできない。さらに、ここで働いてくれているスタッフやクルーは、みんなローカルの人たちだ。
そして、特別なクルーメンバーがいる。サウンドボードのミスター・ニシ!(西さん)ニシさんは俺たちの大切な友人で、素晴らしいミックスをしてくれる。ありがとう、ニシ!君は最高だ!本当にありがとう!

もう一度紹介させてくれ、驚異的なエレキベースの使い手。
ビリー・シーン!!
今宵はこれでおしまいだ。何年も俺たちと一緒にいてくれて心より感謝を申し上げたい。みんなの事を愛しているし、友達だと思っている。いつどこで、どんな形になるかは分からないけど、また会おう。アリガトウ!

ビリーの締めの言葉が終わると、会場は明転し記念撮影が行われた。この記念すべき瞬間をフィルムに収めようと会場全体からはシャッター音が聞こえるだけでなく、何がなんでもカメラマンの画角に収まろうと身を乗り出すファン、拍手で見送るファンがたくさんおり、彼らがどれだけ日本のファンに愛されているのかを五感で感じた瞬間であった。
21時28分、最後のライブがついに幕を下ろした。2時間25分のロックショーはあっという間。ただそこにあるのは、MR. BIGがいたという残り香だけであった。
ライブ後の会場の様子

ライブ終了後は早速さに帰る人、余韻に浸りながら彼らの写真をみる人、私と同じく会場の写真を撮る人など千差万別だ。「リッチー・コッツエンがいた頃以来だったな〜」と声を漏らし過去の思い出がフラッシュバックするしている人もいた。


会場の正面出口には各音楽業界の方たちからの花束の展示と2024年1月に起きた能登半島地震の募金活動もしており、メンバーのサインが書かれラミネート加工された案内板をみることができた。

もちろん募金したぞ!

グッズ販売を覗いてみたけど、スタジャンと写真集以外は全て売り切れになっていたよ。
The BIG Finale! Forever In Our Heartsのセットリスト(2025年2月25日(火) 日本武道館)
項目 | 曲名 | 収録アルバム |
1 | Mr. Gone | 『Bump Ahead』 (バンプ・アヘッド) |
2 | Good Luck Trying | 『Ten』 (テン) |
3 | Price You Gotta Pay | 『Bump Ahead』 (バンプ・アヘッド) |
4 | Big Love | 『MR. BIG』 (MR. BIG) |
5 | Temperamental | 『Bump Ahead』 (バンプ・アヘッド) |
6 | Up On You | 『Ten』 (テン) |
7 | Green-Tinted Sixties Mind | 『Lean Into It』 (リーン・イントゥ・イット) |
8 | Alive and Kickin’ | |
9 | Daddy, Brother, Lover, Little Boy (The Electric Drill Song) | |
10 | Undertow | 『What If…』 (ホワット・イフ) |
11 | Instrument Medley(インストメドレー) | |
Wind Me Up | 『MR. BIG』 (MR. BIG) | |
Mama.D | 『Hey Man』 (ヘイ・マン) | |
Out Of The Underground | ||
Merciless | 『MR. BIG』 (MR. BIG) | |
Anything For You | ||
Voodoo Kiss | 『Lean Into It』 (リーン・イントゥ・イット) | |
The Whole World’s Gonna Know | 『Bump Ahead』 (バンプ・アヘッド) | |
Take A Walk | 『MR. BIG』 (MR. BIG) | |
Defying Gravity | 『Defying Gravity』 (ディファイング・グラヴィティ) | |
12 | Guitar Solo(ギター・ソロ) | |
Gonna Fly Now (Theme From “Rocky”) | 『Original Motion Picture Score ROCKY』 (ロッキー(オリジナル・サウンド・トラック)) | |
Stay Together | 『BIG, BIGGER, BIGGEST! THE BEST OF MR. BIG』 (ザ・ベスト・オブ・MR. BIG) | |
Green-Tinted Sixties Mind | 『Lean Into It』 (リーン・イントゥ・イット) | |
To Be With You | ||
13 | Colorado Bulldog | 『Bump Ahead』 (バンプ・アヘッド) |
14 | Promise Her The Moon | |
15 | Take Cover | 『Hey Man』 (ヘイ・マン) |
16 | Wild World | 『Bump Ahead』 (バンプ・アヘッド) |
17 | Addicted To That Rush | 『MR. BIG』 (MR. BIG) |
18 | Bass Solo(ベース・ソロ) | |
19 | Shy Boy (Talas cover) | 『Sink Your Teeth Into That』 (シンク・ユア・ティース) |
20 | Forever In Our Hearts | 『Forever In Our Hearts』 |
アンコール | ||
21 | To Be With You | 『Lean Into It』 (リーン・イントゥ・イット) |
22 | Just Take My Heart | |
23 | Good Lovin’ (The Olympics/The Rascals cover) | 『The Young Rascals』 (グッド・ラヴィン) |
24 | Baba O’Riley (The Who cover) | 『Who’s Next』 (フーズ・ネクスト) |
25 | I Love You Japan | 『BIG, BIGGER, BIGGEST! THE BEST OF MR. BIG』 (ザ・ベスト・オブ・MR. BIG) |
まとめ:さらば、MR. BIG そしてありがとうMR. BIG
今回MR. BIGのライブに行くのは初めてだったのだが、日本のファンの熱狂ぶりとバンドメンバーたちの愛のかたちを見ることが出来て最高に幸せであった。昔のライブ映像をスマホで観たり、ただアルバムを聴くのとでは明らかに違う。音の波紋がハートに伝わり360度歓声が聞こえ、手に汗握る五感で感じることが出来るのだ。
ラストライブの最終公演は蜃気楼が沸くほど最高の天候に恵まれ、まさにBIG日和であった。ビリー・シーンが言うように、MR.BIGは永遠に我々の心の中で生き続ける。Forever In Our Hearts!





