【第4回】チャーリー・ドアの 「Pilot of the Airwaves」(涙のリクエスト) を紹介【洋楽名曲解説】
ラジオに関して歌っているミュージシャンはたくさんいます。
例えば、バグルスやジャーニー、ハード・ロック・バンドのオートグラフなどが挙げられます。
シンガー・ソングライターのチャーリー・ドアも、そのひとり。
今回は、彼女の最大のヒット曲「Pilot of the Airwaves」を紹介します。
どんな事を歌っているのか考察を交えながら解説します。
- 曲の意味、背景
- 歌詞から読みとく考察
曲の概要
- 1979年アルバム『Where to Now』に収録
- ラジオDJへの愛を歌った楽曲
- 1980年5月3日付のUS Billboardチャートで13位
タイトル “Pilot of the Airwaves”の意味
まずは、タイトルの “Pilot of the Airwaves” の意味から見ていきましょう。
単語 | 発音 | 意味 |
Pilot | UK:*/ˈpaɪlət/US:/ˈpaɪlət/ ,(pī′lət) | パイロット、操縦士、水先案内人 |
Airwaves | UK:*/ˈɛərweɪvz/US:/ˈɛrˌweɪvz/ ,(âr′wāvz′) | (テレビ・ラジオの)電波・放送電波 |
【参考】WordReference.com オンライン言語辞典
直訳すると「電波の操縦士」。
つまり「ラジオの進行役(ラジオDJ)」のことを指しています。
次は、曲の内容から考察していきたいと思います。
曲の内容
#ThrowbackThursday – making my 1st album in Nashville '78 with the wonderful #AudieAshworth, #CharlieMcCoy .@JulianLittman & I with the limmo Audie lent us for the duration. Everyone wanted to drive it – no-one wanted to park it. pic.twitter.com/hJGFHx961F
— Charlie Dore (@CharlieDore) July 12, 2018
【出典】Charlie Dore (@CharlieDore) Xより
曲の内容は、「ラジオ番組を聴いている女性がラジオDJに恋する」というものです。
ラジオDJへの愛は、「あなたの声が聴けるだけでも幸せなの」「あなたの声は最高よ」という歌詞からも伝わってきます。
写真はカントリーミュージックの聖地、テネシー州ナッシュビィルでアルバム制作をしに行った時のものだよ。
では、なぜこのような歌が生まれたのでしょうか?
時代背景を踏まえて考察していきます。
1970年代イギリスのラジオ
1970年代当時のイギリスの時代背景を考えると、より深くわかります。
イギリスでは伝統的なAM放送からFM放送へとシフトし、英国初の国営ポップミュージック局「BBC RADIO1」が1967年に設立しました。
最新のヒットソングを紹介する、トニー・ブラックバーン(Tony Blackburn)や初の女性のラジオDJ、アニー・ナイチンゲール(Annie Nightingale)などの出現によって、より身近な存在になったと考えられます。
【出典】Tony Blackburn Instagramより
特にアニーは元ジャーナリストでラジオ業界は未経験でしたが、リスナーにプログレッシヴ・ロック、パンク・ロック、インディー・ミュージック、ダンス・ミュージックなど幅広い音楽を届けていきました。
「あなたとはもう友達のような気がするの」という歌詞でも、そのような感覚を表現しています。
【出典】nmemagazine Instagramより
また彼女のようなラジオDJが音楽を紹介することで新たな風を取り込むことができたのだと思います。
ちなみに当時のカントリー・ミュージック・ピープル・マガジン(CMP)の記事で「ブリティッシュ・カントリーミュージックの新たな顔」という見出しで紹介されています。
#ThrowbackThursday. A feature 'The New Faces of British Country Music' 🤔🤠CMP from 1978, written by a fresh faced young journalist #RichardWootton I'd just signed my 1st deal with @IslandRecords. @HankWangford was fairly new on the block too! What adventures lay ahead… pic.twitter.com/01k9QzLe6I
— Charlie Dore (@CharlieDore) October 25, 2018
【出典】Charlie Dore (@CharlieDore) Xより
“Pilot of the Airwaves” がリリースされた1979年。
同じくイギリス出身のバンド、バグルスが「ラジオスターの悲劇」という歌を発表しました。
これは、ラジオで流れる人気歌手たちが隅へ追いやられてしまったということを歌っており、チャーリー・ドアとは違う視点でラジオについて歌われているのも注目です。
- 【The Guardian】Annie Nightingale obituary
- UK RADIO IN THE 1970S
その他の考察
1970年代のアメリカのラジオ
70年代のアメリカのラジオは、トップ40形式の番組が人気を博すようになります。
特にラジオDJ、ケイシー・ケイスンの「全米TOP40(American Top 40)」はとても人気番組でした。
【※ケイシー・ケイサムの表記もあり】
書斎に入ったついでに、1974年のロサンゼルス、『All American Top40』を作っていたスタジオに、DJのケイシー・ケイスンを訪ねた時の写真を探して見ました。
— 湯川れい子 (@yukawareiko) January 21, 2024
ハリウッドと言っても、山の際のこんな小さなスタジオでした。
ケイシーにお土産に持って行ったハッピは、組頭と書いたものでした。 pic.twitter.com/fIKvuIUix4
【出典】湯川れい子(@yukawareiko)Xより
トップ40とは、音楽ランキング100位のうち上位40位をカウントダウン形式で紹介するという番組だよ
日本でも彼が80年代に放送していた時の番組を日本盤にして放送。
現在は「ラジオ日本」をキー局に、矢口清治さんが紹介しています。
また、1971年にアメリカのNPR(National Public Radio)が設立されます。
これは、869以上の全国教育ラジオ局やインターネット放送、ストリーミング・サービスを代行している非営利組織です。
クリント・イーストウッドの映画『恐怖のメロディ』
時代を反映するように、この年に公開された映画があります。
映画『恐怖のメロディ』です。
クリント・イーストウッドの初監督作で、熱狂的なラジオDJのファンが、イーストウッド演じるラジオDJに度を越えた執着心からストーカー行為をするというサスペンス・ストーリーが描かれました。
映画では「ミスティをかけて」とリクエストをするところから恐怖が始まってるよな〜
実話を元にして作られているかは定かではないのですが、アメリカのラジオDJのジーン・シェパードさんが実際に女性ファンによるストーカー被害に遭うということもあったそうです。
【参考】JEAN SHEPHERD – Play "Misty"For Me. Part2
以上のような時代背景から、1970年代の英米のラジオDJ人気を伺うことができます。
そのため、このようなラジオDJへの愛が歌われたのではないかと思われます。
まとめ:背景を知ると深みが増す洋楽ソング
【出典】Charlie Dore (@charliedoreofficial) Instagramより
チャーリー・ドアの “Pilot of the Airwaves”(涙のリクエスト)について紹介、そして時代背景を踏まえて解説してきました。
曲の内容と当時の時代背景を知ると、なんとなく聴いていた歌がより解像度が増すと思います。
面白いですよね。
そして、曲に少しでも興味を持って聴いてみたいなと思ってもらえたら幸いです。
チャーリー・ドアは現在も活躍中。
2024年秋ツアーも開催予定です。
詳しい彼女の活動は公式ホームページ(Charlie Dore)からも見ることができます。
知ることで楽しい洋楽をこれからも発信していきますので、応援のほどよろしくお願いいたします。
XとInstagramもやっていますので、よろしければフォローをしてもらえると幸いです。
それでは、良き洋楽ライフを!
SEE YOU NEXT WEDNESDAY!!
記事を読んでいただきありがとうございました。