【第15回】MR.BIGの「To Be With You」は実話だった!? なぜ今でも世代を超え愛されるのか独自解説【洋楽名曲】

このカテゴリーでは主に楽曲解説にフォーカスしています。
あの曲は、何を歌っているのか?有名な曲だけど、歌詞の内容までは知らない。
なんとなく歌っていたあの曲ってそんな歌だったの、といった疑問を解決するコーナーとなっています。
今回紹介するのは、MR. BIGのセカンド・アルバム『リーン・イントゥ・イット』(Lean Into It)から、
“To Be With You” です。
曲の概要
- 1991年セカンド・アルバム『リーン・イントゥ・イット』に収録
- アルバムからのセカンドシングル
- Billboard HOT100で3週連続全米1位を記録
- 世界11カ国でチャート・トップにランクイン
- アルバムはBillboard200で最高15位、日本のオリコンでは6位
- 全世界185万枚のミリオンセラー
- 実話を元にした曲
“To Be With You”の意味
単語 | 発音 | 意味 |
to be with you | /tə ˈbiː wɪð jə/|/tə ˈbiː wɪð ju/ | あなたと一緒いる |
※発音記号は左がアメリカ英語、左がイギリス英語
「To Be With You」は直訳では「あなたと一緒にいる」という意味です。他にも「あなたの味方だ」「あなたに賛成/同感だ」という意味もあります。
また、YouGlishを参考に実際の英会話でどう使われるかを見てみると、以下のような意味があり、日常的に使われる表現の一つだとわかります。
- What a great pleasure it is to be with you(皆さんに会えて光栄です)
- They love to be with you (彼らは一緒にいることが大好き)
- It’s great to be with you (対談などの始まりで)会えて光栄です
- Nice to be with you ((対談などの終わりで)こちらこそ、ありがとうございました)
では、なぜ曲のタイトルになったのか?歌の内容と背景からたどって解説していきましょう。
曲の内容
失恋に傷ついた少女。そんな彼女に寄り添うティーンエイジャーの青年が慰めのメッセージを込めた詞を歌います。
「さあ立ち上がって」「自信を持って」とエールを送るだけでなく、「君が僕の生きがいで、僕は君に微笑みを与えるんだ」という二人三脚で寄り添い支え合うという深いメッセージが込められています。
曲の背景
“To Be With You”は、エリック・マーティンが16〜17歳の時に書いた楽曲で、実際にあった出来事がもとになっています。15年前(1992年時点から)にピアノで作曲、カリフォルニア州サクラメントにいた頃に、とある女の子に向けて書いたものだそうです。
ある女の子を元気づけるために作った曲
一家でサクラメントに引っ越した頃、パトリシア・レイノルズという地元の女の子に恋をしていたエリック。親友でありなんでも悩みを打ち明けられる仲だったそうです。
ドキュメンタリー作品『MR.BIG グループ・ポートレイト』の中でエリックは、以下のように語っています。
当時 彼女は18歳で年上の彼氏に精神的に傷つけられていた。俺は彼女にとってセラピストみたいな存在だったんだ。彼女が俺を頼りにした理由は いまだによく分からないけど、彼女が自信を持てるようにアドバイスをし続けていた。家に帰ると自分が言ったアドバイスを紙に書きとめるようにしていたよ。
まず あのタイトルが頭に浮かびメロディーやコーラスをどんどん足していった、15年間 そのメロディーが頭から離れなかった
(I’m the one who wants to be with you…)
でも やっと世に出して、みんなと分かち合うことができた

パトリシアはエリックのお姉さんの女友達でもあるよ
10代の頃にあった実話、セラピストのような役目を果たしたエリックが15年間温め続けてきた大切な曲だとわかります。
「To Be With You」が形になるまで
デモ・バージョンはアコースティック調で、それはまるでクロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤング風のような曲だったそうです。
Mr.BIGのベーシスト、ビリー・シーン曰く、エリック本人は「To Be With You」に関してあまり関心がなかったと回想しています。しかし、たまたまバンド・メンバー全員がビートルズ好きということで曲を聞かせたところ、全員満場一致で気に入り。

エリックはみんなの反応に驚いたみたいだよ
ポールは早速ギター・ソロを弾いてしまい、特に熱心だったビリーは「アルバムに入れるべきだ」と後押ししたそうです。
歌詞はビートルマニアというミュージカルでポール・マッカートニー役を演じた作詞家のデヴィッド・グラハムと共作で作り上げます。
実はシングルとしてリリース予定はなかった
衝撃の事実なのですが、「To Be With You」はシングルとしてリリースの予定はなかったそうです。それにはレーベル会社であるアトランティックが当時、Mr. BIGというバンドの将来性と彼らの作る曲を気に入らなかったのが背景にあるそうです。
ラジオで流れて人生が大きく好転
しかし、こんな方針には納得はいきません。そこでマネージャーのハービー・ハーバート(ジャーニーやサンタナ、スティーヴ・ミラー、ロクセットなどのマネージャーを務めた人)がアトランティックに「”To Be With You” は最高の曲だからシングルにしたほうがいい」と話を持ちかけます。
その後「スマッシュ・オア・トラッシュ」というラジオの人気投票が行われ、たまたまスマッシュ(お気に入り)に票を入れてくれたネブラスカ州のラジオDJ、ジョン・テリーを筆頭に多くのラジオ局がこぞって「To Be With You」を流しだしました。
そして、アルバムから2枚目のシングルとしてリリースされることになります。

音楽関係者と顔が広かったハービーのプロモーション活動のおかげだね!
“To Be With You”はその後、全米ナンバーワンヒットソングに
【出典】Eric Martin (@iamericmartin) Instagramより
ライブ活動やミュージックビデオの撮影に追われ忙しなかったバンドでした。同時に「To Be With You」はBillboard HOT100で80位圏内にランクインし、じわりじわりとランキングを上げていきます。
その後、ミュージック・ビデオはMTVの週間ビデオランキングで1位を獲得、そして1992年2月29日付の全米シングルチャート(Billboard HOT100)で3週連続1位の快挙を成し遂げます。
日本での人気
全米のラジオ局で流れますが、まだまだ彼らに賭けることが出来なかったアメリカのプロモーターがいる中、信じ続けてくれたのが日本のウドー音楽事務所の有働誠次郎(通称:Mr. Udo)でした。1989年のデビューから来日公演を実現させ、いち早く目を光らせプッシュし続けていたのです。
その頃から日本での人気は確立され、ラジオでは音楽評論家の伊藤政則さんが楽曲を流したり、音楽雑誌やファッション雑誌がフィーチャーしたりとプロモーション活動が多く行われ「ビッグ・イン・ジャパン」となりました。

1994年3度目の来日では武道館にまで上り詰めたぞ!
なぜ「ビッグ・イン・ジャパン」になれたのか、エリックは以下のように回答しています。
MR.BIGが何故日本で、”ビッグ”になれたのかと訊かれても、僕はさっきみたいに「幸運に恵まれたからと、僕らがキャンペーンを頑張った」としか答えようがないけど、バンドとファンが一緒に成長していったというのもあるんじゃないかな。いろんな世代のファンがいて、皆が一つの大きな家族なんだ。そして僕らがまるで日本出身みたいに、ホームタウン・ヒーローとして…… “第二の故郷” のヒーローとして受け入れられた気がする。
ミュージックビデオ
1992年に撮影された「To Be With You」のミュージック・ビデオは客車の中でメンバーが演奏するというシンプルな構成になっています。撮影ロケ地はジェームズ・ディーンの映画『理由なき反抗』に使われたロサンゼルスのグリフィス公園。そこにある鉄道博物館の客車で撮影されました。
【出典】Travel Town Museum Foundation (@traveltownmuseum) Instagramより
撮影は夜の8時〜早朝朝3、4時まで行われ2つのバージョンが出来上がったそうです。
ミュージック・ビデオの考察
【出典】Mr. Big (@mrbig_music) Instagramより
視聴者に語りかけるように展開されるのですが、特にエリックはカメラから目線を離しません。もしかしたら“君へのビデオ・メッセージ”のような意味合いを演出しているのかもしれません。
そして前半はモノクロなのですが、ポールのギター・ソロからカラーになります。これは歌詞の内容からもわかる通り、落ち込んだ気持ちが消え去り、心に明るい光が灯されるということを表していると言っても過言ではないでしょう。
参考文献
以下の書籍や記事、動画などを参考にしました。ありがとうございました。
書籍
記事・サイト
- 【Louder】To Be With You by Mr Big – the story and meaning of the song
- Travel Town Museum Foundation
- Los Angeles Department of Recreation and Parks
動画・映像作品
まとめ:「To Be With You」は世代を超え、人々に微笑みを与えてくれる名曲
この曲は、「絶望」や「逆境」を乗り越えるあらゆる人たちへエールを送る曲に進化していきました。実際、バンド生活はカツカツだったそうで、エリックはマリンカウンティのカナル(低所得者層が多く暮らす地域)に住んでいたと語っています。
また、ビリーはLoudersoundのインタビューで、この曲のおかげで実際に救われたリスナーがいたことを語っています。
「30~40人の人が俺に手紙を書いてきて、”すごく落ち込んで、自サツを考えたりしたんだけど、あの曲のおかげで立ち直ることができた” と教えてくれたんだ」「とても素晴らしいことだよね」
その後、”To Be With You”が全米ナンバーワンの大ヒット。生活が一変するというサクセスストーリーが続くのですが、ある意味でこの曲がバンドに微笑みを与え、逆境を乗り越えさせてくれた天使のような曲とも言えます。
誰かを笑顔にするために書いた曲が、結果的に自分たちのことを笑顔にする曲になったのは、まさに天使が微笑んだ瞬間とも言っていいでしょう。
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それでは洋楽を楽しみましょう! SEE YOU NEXT WEDNESDAY!!





