【ライブレポート】オリヴィア・ロドリゴ GUTS World Tour 日本公演2024年 初来日歴史的瞬間を目撃、大歓声の有明アリーナに歌姫が降臨した夜

2024年9月27日(金)、ついにオリヴィア・ロドリゴの初来日公演初日を迎えた。ライブの開催地、有明アリーナは6日前までサミー・ヘイガー率いるヴァンヘイレンの集団がヒット曲を演奏した会場だ。
ダッド・ロックの王様から令和の歌姫にバトンが渡されたここ有明アリーナで、オリヴィアのライブに参加したのでレポートをする。
ツアーのハイライトをまとめた【祝初来日公演】オリヴィア・ロドリゴが有明アリーナで見せたヤバすぎるライブ演出5選【GUTS World Tour】も合わせてチェックして見てくれ。

公演前の会場の様子
昼過ぎから終演まで約7時間ほど有明アリーナ周辺にいたので、会場付近の様子を紹介しよう。
物販の様子

私が会場に着いたのは13時50分頃。ゆりかもめ「有明テニスの森駅」から徒歩10分ほどの距離で、道中にはオリヴィアのグッズを身につけたファン(Livies)たちがズラリズラリと往来していた。グッズ案内の看板に従い有明アリーナ会場内に潜入。

あいにくの雨という事もあり、販売エリアは屋内 (サブアリーナ) で行われていたが大正解だ。

ここへ入ると、入口では青いジャケットを着たスタッフさんから東京限定のQRコード入りのトレーディングカードが配布され、4列編成の物販の列に並ぶという流れができている。『ガッツ』がエンドレスで流れる中、すでに2〜300人くらいは並んでいるという状況ではあったが、SOLD OUT(売り切れ)という文字は見かけることはなかった。


サブアリーナはだいたい学校の体育館と同等か一回り小さい広さのスペース。
ツアーグッズとCD・レコードの販売、等身大パネル、VIP特典受け取りとエリアが分割されている。


入口と出口がしっかり分かれており、導線もしっかり取れているので混雑が起きない工夫が凝らされている。

途中にはフェンスにサンプルがあり手に取る取る事もできたぞ!
ファンの様子
【出典】livies hq (@livieshq) Instagramより
オリヴィアのステージ衣装を真似した自作のコスプレ?をするLivies達を目撃したのだが、海外アーティストのライブには必ずと言っていいほど、なりきりボーイズ&ガールズが存在する。いつの時代、どの年齢層にもいるようだ。

ただLivies達はFB(フレンドシップ・ブレスレッド)を交換したりと交流が深い印象を感じる。テイラー・スウィフトの時と同じ現象が起きているのだ。
改めて思ったが、年齢層は10代〜20代前半の女性ファンが圧倒的に多い。それに続き男子勢という割合だろう。

大学生くらいの男性ファンも多かったな

また国際色も豊かだ。様々な言語が飛び交う有明アリーナでは海外から来たファンも多くおり、日本まで来るとはなかなかコアなLiviesと理解できる。親子で来たであろうファン、夫婦、学校帰りのJKなど参加したファンは千差万別だ。
もちろん私と同じソロでの参戦のファンも多く見られた。
会場内の様子

入場まであと数分、外では小雨が降り出し、いまかいまかと待ち侘びるLiviesたちがソワソワする。結局入場入りが出来たのは17時45分。「VIPスタンディング席から順番に入場してます」との声かけが聞こえなんとか入場。

雨で湿ったチケットを見ながら自身の席を探す。道中には等身大パネルがあったり、頭上のモニターには今回のコンサートの宣伝が映し出されていた。

SEで、Depeche Modeの “Enjoy the Silence” やSleigh Bellsの “Crown on the Ground”, Caroline Polachekの “So Hot You’re Hurting My Feelings”の他The Ting TingsやThe Clash, Joan Jettなどの楽曲が流れる中メイン会場に突入する。
ライブ会場に入ってからのこの瞬間はいつも最高。#GUTSWorldTourTokyo pic.twitter.com/fP6aCLuz2I
— つるミュージック@洋楽専門ブロガー (@tsurumusicblog) September 27, 2024
うっすらスモックがかかり、外の気温と相まってやや肌寒い場内。有明アリーナは初めてなのだが、今回S指定席2階からの眺めは意外と近くて興奮が止まらない。

前回私が参戦したのが今年2月のQueenの東京ドーム公演という5万人規模の会場だからというのも、あってステージからの距離が近い近い。
さて、ここから嵐の前の静けさは約1時間ほど続く。あらゆる場所からシャッター音が飛び交い、セルフィーを撮るLiviesたち。「え、めっちゃよくな〜い」などの声が会場内を賑わす。有明アリーナ、白く照らされる会場とパープルに染まるステージのコントラストが夢と現実の境を異世界を作り出す。
この待ち時間、これから始まると楽しみ半分、恐怖半分入り混じった謎の感覚が襲いかかる。ズラリズラリと入場するLiviesたち。パープルやレッドに染めたカウボーイハットの女子やobsessedのタスキをかけた完全オリヴィアに取り憑かれた者もいる。開演30分前あたりから、突如サウンドチェックが始まりドラムを叩く音やベースの太い音が心臓を貫く。しかし、まだ会場には余裕がある。

驚いたのが18時45分のことだ。突如ステージに映し出された”Guts”の蝋燭に「キャーッ」「ワーッ」っと歓声が上がった。



しかもこれは時間が経過するにつれて文字が溶けていくギミックが隠されており、”t”が倒れた時に再び歓声が上がった!
「キャー、キャー、ギャー」Oh my god
ライブ開始

その時は突如現れる。19時05分、人影が映し出され、オリヴィアがバックステージを走りし抜ける映像が流れる。そして”GUTS”と書かれた指輪をはめた拳がカットイン、ラベンダー色のドアをノックする。
白の照明が血肉を抉るようなヘヴィなドラムビートに合わせて点滅、赤色を加えた3パターンの照明が交互に点滅し、センターにライトが集まった時。
そこにオリヴィアはいた。まるでマイケル・ジャクソンが登場した時のようだ。
ライブは「bad idea right?」で幕を開ける。上下ラメ入りの衣装でキラキラと輝く歌姫の登場に、オーディエンスは歓声をあげるものの、オリヴィアと歌のキャッチボールが出来ている。
ぴょんぴょん飛び跳ねスキップしながらハの字型のステージをまわる彼女、”Seein’ you tonight, bad idea right?”と声を荒げて、ロック色を全面に出している。すでにオーディエンスとのシンクロ率が高い、そう、東京に来るのは “good idea” なのだ。

間髪入れず歌われるのは「ballad of a homeschooled girl」だ。
背後にはアルバム風の映像が流れおり、オリヴィアとサポートメンバー達が投影されている。この曲からステージの端のまで駆け寄ってくれて、手を降り出す極上のファンサービスが半端ない。
“social suicide” という歌詞に合わせて蹴りを入れるロックスター並みのパフォーマンスも圧巻だ。


ここから一度暗転、ブルーのライトがぽつりと取り残される。あちらこちらから「オリヴィア〜」と叫ぶ、オーディエンス。スポットライトがオリヴィアを照らし、各方向へと動き回る彼女は歓声をかき集める。
まだ2曲しか演奏していないが、すでに東京を支配しているのだ。ここから始まるのはオリヴィアのMCだ。
「ハーイ、こんばんはTokyo!」
「Guts World Tourへようこそ!」
「今夜はすごく特別な夜よ。」
「みんなにお願いなんだけど、席を立って、ジャンプして、叫んで、大声で思いっきり歌ってほしいの。やってくれるTOKYO!」
「長い間ずっとこの夜を楽しみにしてたわ。みんながここに来てくれて本当に感謝してるわ。」
「本当にありがとう!」
投げキッスをして手を振り、ステージ中央へ戻ると「vampire」が演奏される。ドラマチックな歌声とピアノの戦慄、一語、一語はっきりと聞こえるオーディエンスの合唱からは、すでにシンクロ率は100%に達していると分かる。

満月が映し出されるのだが、曲の後半では生き血を想像させる赤一色に染まる。暗転して心に響く重低音が会場全体を包み込み、先ほどとは違う青い照明の中「traitor」が始まる。
恋人の裏切りで傷ついたティーン・エイジャーのことを歌ったこの曲は、より一層深いものに変化している。それはオリヴィアのセンチメンタルな歌声から分かるのだ。
背後には8人のダンサーが集結、スクリーンに映し出された影絵とダンスがシンクロして、まるで舞台をみているかのようだ。ライブならではのアレンジも加えられ、アウトロにはギター・ソロが涙を誘う。
オリヴィアの“drivers license”を生で聞けたのが個人的に1番嬉しい。
— つるミュージック@洋楽専門ブロガー (@tsurumusicblog) September 28, 2024
セトリからも分かるように”traitor”と2つでひとつの作品と改めて感じた。#GUTSWorldTourTokyo #オリヴィア来日2024 #oliviarodrigogutstour pic.twitter.com/3C7LEXKjxl
続いて演奏されたのは全米No. 1ソング「drivers license」だ。
ステージ中央、スモッグが波のように流れる中、オリヴィアが奏でるグランド・ピアノの弾き語りで始まるこの楽曲、やはり「traitor」と「drivers license」は2つでひとつの物語になっていると分かる。
共通する「裏切りによる失恋」というテーマ、憎しみから悲しみの曲に変化する物語はステージでも圧巻のもの。
“red lights, stop signs”と始まるブリッジでは「歌ってー!」と声をあげ、赤く染まった会場全体からシンガロングが巻き起こる。最後のコーラスパートはファン全員で歌い、再び大合唱が起こるのだ。
演奏が終わると彼女の顔からは笑みが溢れた。「TOKYOのみんな、本当に歌が上手ね、ありがとう」とニコニコしながらピアノを弾き続けるオリヴィア。
彼女のMCは以下のように続く。
「次の曲は19歳の誕生日の数日前に書いた曲です。」
「当時大人になることが怖くて仕方なかったわ。世界で何よりもそれが嫌だったの。」
「でも、21歳になった今、全然そんな風には感じないわ」
「むしろ大人になるのがエキサイティングで、未来がどうなるかワクワクしてる」
「もしこの曲を書いた18歳の自分へ何かアドバイスをするとするとしたら、そんなに心配することはないと伝えたいわ。」
「彼女はまだ、これから素晴らしいことがどれだけ待っているか、全然知らないんからね」
と大人になった彼女自身が過去の自分にアドバイスを込めたメッセージに続くのは「teenage dream」だ。

幼い頃の写真や映像がスクリーンに映し出され、後半の彼女の歌声からは不安なんてないと、むしろエキサイティングだと語っていたようにニッコリ笑顔を見せる。そこには、蝶の様に美しく成長した歌姫の姿があったのだ。

伴奏とブルーの照明が光り輝く中、幼い頃のオリヴィアの肉声が流れるという演出が施される。暗転したステージから新たに繰り広げられるのは「pretty isn’t pretty」。衣装チェンジを短時間で行い、ラメの入った黒のブラトップにショートパンツに網タイツのスタイル。
SNSで可視化された”美”、他人との比較や常に追い求めなくてはいけないと疑問をぶつけた詩から連想された演出は見もので、手鏡を持つ8人のダンサー達からは、満足しない美の追求が全身で表現されている。

ブルー基調のステージで連続で演奏される「love is embarrassing」では、息の合った見事なダンスを披露。女優出身ともあり自分の見せ方をしっかり理解している。
カメラを覗き込むパフォーマンスでは、オーディエンスを沸かすシーンも見られた。ケイト・ブッシュのライブを彷彿とさせる様なコレオグラフィーが魅力的な瞬間だ。

演奏が終わるとオリヴィアのMCでメンバー紹介がされる。
ビューティフルダンサーたち、キーボードのカミーラ(Camila Mora)、バックボーカルのインディア (India Carney) とアニリー (anilee)、ギターのエミリー (Emily Rosenfield) とデイジー (Daisy Spencer)、ベースのモア (Moa Munoz)、ドラムのヘイリー (Hayley Brownell) が個々のパフォーマンスを披露。
「調子はどうTOKYO!」「次の曲の準備はいい?」
センターポジションに戻ると横たわるオリヴィア、床が持ち上がり歌われる「making the bed」では、大きな動きは見せないが、仰向けで歌いきるという歌唱力に、あっと驚かされる。
再び暗転した後、ステージ中央のブルーの照明と重低音の効いた宇宙的なSEが会場内を沸かす。あちらこちらから「オリヴィアー!」との声が飛び交う中、なんと会場後方から現れる。

「キャー、キャー」と登場と同じくらいの歓声が湧き出し、水色に光る三日月に腰を添えたオリヴィア。すでに衣装チェンジを済ませている。
織姫ならぬ”オリ姫”がアリーナ上空から手を振り歌いだす。愛の不合理さを2+2=5という数式で描いたバラードソング「logical」だ。
SNSで出回っている画像で知っていたのだが、実際に肉眼で見るとひと味違う。上下移動と一回転することしか出来ないのだが、こちらを向いてくれとばかりに興奮が止まない。
曲が終わるとオリヴィアの提案で「会場の上手と下手同士の歓声の競い合い」をすることになり、「できるだけ大声で叫んで、3・2・1!」の合図で始まりLiviesを巻き込む気絶寸前の盛り上がりを見せた。MCは以下のように再び続く。
「本当に最高のお客さんね、なんて素晴らしいの。」
「今夜は来てくれてありがとう。今回は日本での初めてのコンサート、ここに来れて本当に感謝してるわ」
「みんなが来てくれたことに心から感謝してるわ。とっても嬉しい。夢が叶ったわ。」
「次の曲は私の1stアルバム『サワー』からの一曲です」
「実は私個人のお気に入りなの。曲のタイトルは “enough for you”」
三日月の上で続けて「enough for you」が披露される。場内は、スピーカーよりも大きい歓声と熱気があふれ非現実的な空間になっていた。
浮遊館を感じさせる未来的なSEとともに、ステージへ駆け戻るオリヴィア、ステージにはオーロラの様な幻想的な映像が流れ、センターポジションに戻ると美しいフィンガースタイルのギターから繰り広げられる「lacy」が始まる。

歌の途中からダンサー達が円柱のステージの周りを囲い、アーティスティックで幻想的な演出が始まり、ステージ上部のカメラから捉えた映像がスクリーンに映し出され、スノーエンジェルや花びらの様にも見える作品を拝むことができる。

再びMCへ移り、「TOKYO、楽しんでるー?」とスキップしながらステージ前方へ向かってくるオリヴィア。
ここからはファンとの交流が交わされスクリーンには、ORのロゴが日本国旗につき寄せ書きがされているものが映し出されたり、友達同士できた女子2人組、親子連れなどが映し出された。


投げキッスをしていたのが印象的だな。
ブルーのアコースティックギターを渡されるが、MCはまだまだ続く。
「みんな来てくれてありがとう。」
「ここに来れてすごく嬉しい、さっきも行ったけど日本で”初めて”のコンサートなのよ。」
「何度か来たことはあるけど実際にショーをするのは初めて、そしてみんながここにきてくれているなんて信じられない。本当に、ありがとう。」
「本当に本当にこの街が好きなんだ。毎回ここに来るたびにすごく楽しい時間を過ごしてるわ。」
「たくさん探検して、ショッピングして、体重分くらいのラーメンと寿司を食べるの。」
そして「キョウハ、アリガトウ」っていう言葉を覚えたんだ。
「学んで、探検して、新しいことを色々してるけど、結局ね、日本にいる時もアメリカ人だな〜(”so american”)って感じるんだよね」
「分かるでしょ!」

日本語を喋った時にちょっぴり恥ずかしそうに笑みを浮かべるオリヴィア。オーディエンスもクララが立った以上のカオスな状態が続くのだが、会話の終わりから「so american」に続いていく。

伏線回収のような見事な流れ、ギブソンのアコースティックギターをかき鳴らし、体を左右に揺らし飛び跳ねながら歌われるポップ・ロック調のこの曲は、『ガッツ(スピルド)』の隠しトラックに収録されている最新曲だ。

再びMCが始まり、ファンの作ったハート型のボックスを手に入れたオリヴィア、「上も開くの〜」と自慢げにバックバンドのメンバー、モアに見せるのだが、彼女は嫉妬 (jealousy) してしまう。こちらも伏線回収、次に始まるのは他人と比べて嫉妬し、自己嫌悪に陥ってしまうティーンについて歌った「jealousy, jealousy」が演奏される。
モアと背中あわせで歌い始めるのだが、コーラスでは向かい合った状態で歌うというパフォーマンス。この場面を見たオーディエンスはたちまち歓声をあげ、ボルテージはさらに上がる。
完全にノックアウトされたのはカメラ目線でベロを出したこの場面だろう。ここでは老若男女全員失神KOされるのだ。

ハの字方に広がったステージの先で歌われるのは、「happier」デイジーの奏でるアコースティックギターとオリヴィアの息の合った演奏が見どころだ。ここでオリヴィアは詩の生まれる瞬間のことをシェアした。
「私は一番予想もしない場所で曲のアイデアを思いつくことがあるの。」
「シャワー中に思いつくことも多いし、車で渋滞に巻き込まれている時にも思いつくことがよくあるわ」
「時には夢の中で曲を思いついて、目が覚めて忘れない様に書き留めておこうとすることもあるの」
「でも、次に演奏する曲のアイデアは、撮影現場のシーンの途中で思いつきました。その時に “I hope you’re happy but don’t be happier”というフレーズが浮かんできたの。」
「『おお、これいいね!いい曲が作れそう』って思って、急いでトイレに行って、個室にこもって最初のコーラスを携帯に録音したんだよ」
「あの時、そうして本当によかったと思ってるわ、だって今夜みんなと一緒にその曲を歌えるからね!」
「それでは聴いてください。一緒に歌ってね。」
「曲のタイトルは「happier」です」
シンガロングが一体となり「happier」で会場の奥まで共鳴させる、美しい瞬間を目撃した。

アコースティックでの演奏はもう一曲、失恋という名の”恋の共犯者” を描いた「favorite crime」だ。原曲もアコースティックだが、ライブならではの一体感が感じられる素晴らしい楽曲に変貌を遂げている。

暗転してから、キラキラとしたノスタルジックなキーボードが聞こえ始まるのは「deja vu」。8人のダンサー達が再登場し、オリヴィアも息の合ったダンスを披露。モニターは少し曇りがかったヴィンテージ風のアレンジがされ、ケイト・ブッシュの「嵐が丘」のミュージック・ビデオをつい連想してしまう。

デジャブという言葉通りの映像だな
印象的なのはコーラス部分を観客全員で歌うシーンだ。英語の歌詞も簡単でポップさもあり歌いやすい「deja vu」のコーラスは老若男女みんなで声を荒げた!
間髪入れずに続くのは「the grudge」、イメージカラーの紫の照明の下、オリヴィアはセンターラインで歌詞を噛み締めながら歌う。失恋でおった傷の深さを感傷的に歌うその姿から、つい男泣きしてしまうほどだ。
スクリーンに紫色のカーテンが映され、風になびきながら赤く燃え上がる。荒々しい歪んだベースのリフが演奏されると、そこにはもはやポップ要素はない。完全にヘヴィー・メタル、ハード・ロックのステージへと変貌を遂げる。
ステージの頂点3箇所にギターとベースが別れ、強烈な伴奏を繰り返す。どこへ目をやっていいのか分からない中、自然と「brutal」に切り替わる。ステージの下から登場したオリヴィア、胸元の開いた赤のレオタード、ラメ入りの星が描かれた黒のストッキングに身を纏い、足をクロスしながら優雅に前進してくる。

オーディエンスとの掛け合いも初来日とは思えないくらい息があっているのだ。例えば“Where’s my f**king teenage dream” という部分を観客席に向けた時なんかは会場からFワードが弾丸のように飛び交う、飛び交う。
ベースのモアと背中合わせになり、ゆっくりとしゃがんでいくセクシーでカッコいい姿を見せるだけでなく、四つん這いになるシーンまでありサービス精神お旺盛だ。曲の最後はステージ中央で自身のバンドを従えたかの様な佇まいを見せ、ポップ歌手というよりもザ・ランナウェイズを思わせるようなガールズ・ロック・バンドのボーカリストと言った方がしっくりくる。

そしてサイケデリック要素を増したギターが特徴的な「obsessed」が続く。
全体を赤基調にしたステージでは、モニターに舌を出したオリヴィアや、今彼の元カノたちに取り憑かれた女の叫びが歌詞に合わせて動き出す、徹底的に作り込まれた映像美が楽しめる。

またオリヴィアの真下からの撮影されるシーンがたまらない、最後にはセイント・ヴィンセントのシグネチャーモデルのエレキ・ギターを荒々しく弾く。
完全にロックスターと化した有明アリーナの支配者は、とにかくスイッチが入ったら止まらない。ギターのヘッドをシンバルに叩きつけたり予想不能な行動に出るのだ。


ある意味お茶目でいいのかも!
そしてその姿を見て私たちは完全に obsessed、してしまった。ポップ・パンク風の演奏が披露された後、アコースティックによる「all-american bitch」のギターリフが流水のように演奏される。
マイクスタンドに寄りかかるオリヴィアの佇まいに、甲高い歓声が巻き起こる。会場の熱量は半端ない。熱い、熱い。夏が戻ってきたようだ。

まだまだエネルギー切れを見せないオリヴィア、なんと開演から1時間40分近く経っているのにハの字型の会場をスキップしながら歌い続けるのだ。
また原曲にある叫び声をこのライブ会場でも再現するというサプライズも最高だ。
「all-american bitch」でイラついたものや人を思い出して、暗転した時に大声で叫んで!という演出はヤバかった。
— つるミュージック@洋楽専門ブロガー (@tsurumusicblog) October 1, 2024
オーディエンスが作り出す最高の瞬間はライブでしか味わえない。
ぜひライブアルバムも出してほしい! pic.twitter.com/3tz9SYROyW
「OK、こうしよう、今から本当にイラついた事だったり、イラつかせた奴のことを思い浮かべて!照明が暗くなったら出来るだけ大声で叫んでね!全部吐き出してよ、いいね!」
暗転した会場で10秒間にわたってファンがオリヴィアに叫び、悲鳴を聞かせるという展開に。ここで喉が枯れたのは私だけでは無いだろう。バンドの演奏が終わり、アンコールの拍手が響く。

3分後、聞き馴染みのあるベースラインで再度幕が開ける。「good 4 u」だ。
アヴリルやベッカ、アラニス・モリセットといった先輩たちから継承された爽快なロックソングは、令和の今オリヴィアが新たな時代、先人を切って作り出している。

ロックの王位継承と言っても過言ではない。アンコール最後の曲は「get him back!」だ。イントロが演奏された後、マイク内臓の真っ赤なメガホンで「Are you still with me TOKYO~」(ついてこれてるかいTOKYO)との掛け声で、オーディエンスに問いかけるところから始まる。
アンコールから衣装が変わり白のタンクトップにシルバーのショーツという姿。

ロックの王女が君臨し、ダンサー達を引き連れる。最後にはステージ両サイドとSS席後方から星形のコンフェッティ(紙吹雪)が発射され、ボルテージは最高潮。ハの字のステージの端から端まで移動し歌い、最後の最後まで全力でオーディエンス向き合い共鳴をし続けた。
最後は「ありがとうTOKYO、みんな最高だわ!、グッドナイト!」と汗で乱れた髪をかき分けステージを小走りで移動し、手を振りながら会場全体に投げキッスをする。彼女は一瞬今にも泣きそうな表情を浮かべていたが、終わりたくないこの瞬間を1秒でも多く噛み締めていた様に見えた。

手を振りながらステージ中央に吸い込まれていくオリヴィア、最後の最後でジャンプして飛び出してくるのもお茶目で最高だ!
20時52分、初来日公演初日が今終わった。1時間47分の圧巻のショーはあっという間であった。
ライブ終了後の会場の雰囲気

ライブ終了後、スクリーンには紙吹雪を掃除する清掃員が映し出されるというシュールな映が流れるのだが、会場では枯葉などを吹き飛ばすのに使うダスターで吹っ飛ばされていた。
終演後は規制退場でそれぞれ待ち時間があり、改めてセルフィーや記念写真を撮るファンも大勢見受けられるという光景が広がる。感想を友人同士で語るファン、物販を買いに行くファン、FBを交換するファン、黙々と余韻に浸るファン、皆それぞれ楽しそうで何よりだ。

趣味も年齢も人種も違う人々が、オリヴィア・ロドリゴという共通の推しのために集まった。こういう機会はライブでしか感じられない、さらに一度として同じショーは無いのだ。ライブは素晴らしいことだと改めて感じた。
GUTS WORLD TOUR TOKYOのセットリスト (2024年9月27日@有明アリーナ)
曲名 | 収録アルバム | |
1 | bad idea right? | 『ガッツ』 (Guts) |
2 | ballad of a homeschooled girl | |
3 | vampire | |
4 | traitor | 『サワー』 (Sour) |
5 | drivers license | |
6 | teenage dream | 『ガッツ』 (Guts) |
7 | pretty isn’t pretty | |
8 | love is embarrassing | |
メンバー紹介 | ||
9 | making the bed | 『ガッツ』 (Guts) |
10 | logical | |
11 | enough for you | 『サワー』 (Sour) |
12 | lacy | 『ガッツ』 (Guts) |
13 | so american | 『ガッツ(スピルド)』 (Guts(Spilled)) |
14 | jealousy, jealousy | 『サワー』 (Sour) |
15 | happier | |
16 | favorite crime | |
17 | deja vu | |
18 | the grudge | 『ガッツ』 (Guts) |
バンドソロ演奏 | ||
19 | brutal | 『サワー』 (Sour) |
20 | obsessed | 『ガッツ(スピルド)』 (Guts(Spilled)) |
21 | all-american bitch | 『ガッツ』 (Guts) |
アンコール | ||
22 | good 4 u | 『サワー』 (Sour) |
23 | get him back! | 『ガッツ』 (Guts) |
まとめ:オリヴィア・ロドリゴ初来日初日、歴史的瞬間を目撃した

ディズニーから登場したスター歌手、オリヴィア・ロドリゴ。彼女のライブは圧巻であった。一切妥協しない完璧なステージ演出、フィジカルの強さ、ピッチのブレない生命力溢れる歌唱力、ポップでキュートでチャーミングな歌声とパンクでヘヴィなロックのサウンドを持ち込んだ音作り。全て100%出し切っていた。
ワールドツアーも残り数都市、ラストスパートまで駆け抜けて欲しいものだ。私はマイリー・サイラス、デミ・ロヴァート、セレーナ・ゴメスをリアルタイムで聴いてきた世代なのだが、オリヴィアは彼女たちと並ぶ、いや超える存在だと実感した。
非常に嬉しく思ったのが熱量が最高潮のタイミングで推しがリアタイで来日公演をしてくれたこと。実際日本で来日公演をしたのは2016年のセレーナのみ。デミもマイリーも来日したことはないし、マイリーに関しては2014年からツアーはしていない。また私自身が海外で生活していたこともあったりと、生の歌声を聞ける機会がほとんど無かった。
しかし、オリヴィアはデビューから3年というスパンでライブをしてくれた。
コロナ禍に生まれた新たなスター歌手がここまで盛り上がったのは、奇跡とも言えるだろう。そして新たな “ビッグ・イン・ジャパン” のアーティストになってほしいと心から思う。有明の夜空には、パープルレインから七色に輝くGUTSというスターが降り注いでいた。
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